記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
滲出性中耳炎は、鼓膜の奥にある中耳に液体がたまって鼓膜の動きが悪くなり、聞こえにくくなる症状です。この症状は自然治癒でも治るため放置する人が多いのですが、本当に病院に行かなくても大丈夫なのでしょうか。
耳は音を感じる部位で、外側から外耳、中耳、内耳と3つに分類することができます。外から音が入ってくると、鼓膜を振動させて脳に伝えますが、鼓膜の奥にある中耳に液体(滲出液や貯留液と呼ばれます)がたまって鼓膜の動きが悪くなり、聞こえにくくなるのが滲出性中耳炎です。風邪やアレルギーなどで鼻水が出たり、鼻づまりの状態が続くと発症しやすくなります。滲出性中耳炎になると、高いところに登ったときに感じる、耳が詰まったような状態になります。
滲出性中耳炎になると、大人の場合は難聴や耳の詰まり、自分の声が耳に響くといった症状を訴える人もいます。中には、耳の中で水の音がするように感じる人もいます。
子供の場合は、聞こえにくいことを大人に伝えるのが難しい場合があります。発症すると、テレビの音を大きくしたり、呼んでも振り向かなかったり、耳を触ったりする症状がみられます。親が日常の様子を観察して異変に気づくことが大切です。
滲出性中耳炎は自然に治ることがある病気です。このため、放置してもいいのではないかと考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、放置すると急性中耳炎を繰り返しやすくなります。なかなか治らない中耳炎の原因が滲出性中耳炎だった、という例は少なくありません。特に子供の場合、滲出性中耳炎になっても気づきにくいため、放置されがちです。放置したことで他の病気を発症することもありますし、子供の場合は急激に症状が進んでしまうことも珍しくありません。気づいた時には症状がかなり進行していて、手術が必要になるケースもあります。
滲出性中耳炎を放置すると、急性中耳炎だけでなく、癒着性中耳炎に移行してしまう可能性もあります。この病気は聴力が悪化するのはもちろん、元の聴力に戻ることがないことが特徴です。また、耳の中で癒着しているので手術が必要になります。
そのほか、コレステリン肉芽腫や真珠腫性中耳炎を発症するリスクもあります。コレステリン肉芽腫は、滲出液に加えて血液が混じったものが固まってしまう病気です。とても治りにくい病気で、手術が必要になるケースもあります。また、真珠腫性中耳炎は骨を溶かしながら進行する恐ろしい病気です。聞こえが悪くなるだけでなく、めまいや頭痛を感じるようになります。最終的には顔面神経や脳が侵されてしまうため、命に危険性が及ぶこともあります。こちらもすぐに手術が必要となるほどの重い病気です。
これらの病気に移行するのを防ぐためにも、滲出性中耳炎の段階で早期発見・早期治療することが重要になります。早めに治療を開始すれば、重症化を防ぐことができます。
滲出性中耳炎は自然治癒することがあるため、治療しなくても放っておけば治る、と思われることがあります。しかし、放置すると急性中耳炎や癒着性中耳炎など、深刻な症状を併発する可能性があります。聞こえが悪くなったり、耳が詰まったような感じが続いたら、早めに医師の診察を受けましょう。