親知らずを抜いた後の喫煙・飲酒は歯にどんなリスクを及ぼす?

2018/2/15

記事監修医師

日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科

川俣 綾 先生

親知らずを抜歯した後、傷口が回復するためには血液が重要な働きを担います。回復期間中に喫煙や飲酒といった行為をすると、親知らずの回復にどのような影響があるのでしょうか。

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親知らず抜歯後の回復の仕方

人の歯は、あごの骨に埋まっています。親知らずを抜くと、歯がはえていた骨に穴ができます。この穴は、抜歯後血液で満たされ、1日経過するとかさぶたのようになって膜が張ります。約3日経つと肉が盛り上がり、粘膜が生成されます。7~10日経つと、粘膜が正常に戻ります。そして、約1カ月で新しい骨が作られ、約3カ月で穴が骨でふさがります。
傷口の回復には血液が必要なため、親知らずを抜いた後は血流を安定させることが重要です。出血が過剰だったり、栄養が十分に供給されなかったりすると回復が遅くなります。

親知らず抜歯後の傷跡の状態を不安定にする行為とは?

親知らず抜歯後、血流が滞ってしまったり、逆に必要以上に血流が増えてしまうと、回復が遅くなる可能性があります。
日常生活の中で、血流を不安定にする行動が大きく3つあります。1つは飲酒です。アルコールには血管を拡張する作用があります。血管が拡張すると出血につながり、傷の回復が悪くなります。抜歯後2~3日程度は、アルコールを摂らないようにしましょう。2つ目がタバコです。タバコの煙に含まれるニコチンは、毛細血管を収縮させて血流を悪化させるため、傷の回復が悪くなります。そして、3つ目が運動と入浴です。運動と入浴は血流を良くするため、傷口への血液量が増えて傷の回復が悪くなることがあります。抜歯後2~3日は激しい運度を避けるとともに、入浴するときは湯船につかることは避けてシャワーにとどめましょう。
抜歯後に避けるべき3つの行動のうち、特に気を付けたいのがタバコです。タバコの有害物質は傷口に悪いのはもちろん、タバコの煙を吸うという動きによって、傷口をふさぐためにできたかさぶたが取れてしまう可能性があります。かさぶたが取れて、親知らずを抜いた部分の骨が露出した状態のことを「ドライソケット」と言います。ドライケットになると、食事のたびに痛みが出ます。重症化すると、1カ月に渡って痛むこともあります。抜歯後、1週間から10日経っても痛みが引かない場合は、ドライソケットになっている可能性がありますので、医師の診察を受けてください。

親知らずの抜歯後に注意すべきこと

親知らずの抜歯後は、傷の状態を悪化させる行動を避けることが大切です。まず、うがいはできるだけ控えましょう。必要以上にうがいをすると、かさぶたになり始めた血を洗い流してしまう可能性があります。また、舌で傷口をなるべく触らないようにすることも大切です。食べ物が傷口にひっかかったり、詰まったりするので気になってしまうかもしれませんが、触りすぎるとかさぶたをはがしてしまうことがあります。また、薬は必ず服用しましょう。抜歯後は痛み止めと抗生物質が処方されます。痛み止めは抜歯直後の痛みを緩和するために服用し、その後は痛みが出たらその都度飲むようにしてください。また、感染症を防ぐために処方された抗生物質は飲み切ってください。血が止まりにくくなってしまうので、アルコール、激しい運動、熱い風呂などの血流が良くなることは避けましょう。反対に、傷口を冷やすと腫れが和らぎます。腫れがひどい場合は、氷水や氷のうで冷やしましょう。

おわりに:親知らずの抜歯後は傷口の回復に努めましょう

親知らずの抜歯後は、傷口がどうしても気になってしまいます。舌で傷口を触りすぎたり、過剰にうがいをするのは避けましょう。また、タバコやアルコール、激しい運動や熱いお風呂へ入ることは傷の回復を悪化させます。抜歯後は、傷口に負担をかけないようにして回復に努めましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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