記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「骨折して半年以上経つのに、まだ動かすと痛い…」—もしかするとそれは、「偽関節」の症状かもしれません。今回の記事では偽関節の概要やリスク、治療法について詳しく解説していきます。
偽関節とは折れた骨をくっつける骨癒合プロセスが途中で止まってしまった状態のことで、骨折の後遺症のひとつです。骨折後、ギブスで固定して半年以上経過しても骨がくっつかず、まるで偽物の関節ができたような状態が偽関節です。症状としては、しっかりと骨がつながっていないので、動くたびに痛みを感じます。また、力がうまく伝えられなくなります。
通常の骨折治療では、添え木やギブスなどを使って骨を元の位置で固定し、骨が自然にくっつくのを待ちます。折れた骨同士の組織が成熟することで骨が元に戻り治療が完了します。
一方、偽関節ではギブスで固定したとしても骨がくっつきません。治療から半年しても骨がくっつかず、その後3ヶ月しても回復してきません。偽関節になってしまうケースは骨折全体の5~10%を占め、治りにくいと言われています。
また、偽関節になりやすい骨折の種類としては、開放骨折があげられます。開放骨折とは、皮膚から骨が飛び出してしまう骨折で、細菌感染が起こりやすいです。細菌感染が起きると骨がくっつくのに重要な仮骨ができにくくなるために偽関節になりやすくなります。
偽関節になってしまうと手術による治療が必要です。具体的な手術法は、自家骨移植という手法です。患者自身の腰の骨などの一部を取り出し、偽関節の隙間に移植します。骨と一緒に血管を移植し、骨への血液の流れを確保することもあります。
また、イリザロフ法という手法も偽関節の治療に使われます。イリザロフ法では、偽関節になってしまい壊死した骨を取り除きます。そして残った骨に銅線を通し、装置を使って体外に固定します。こうして骨を一時的に短い状態に調整をして、骨の間に仮骨を作ります。骨を固定している装置を使い、骨の間を1日1mm程度伸ばすことで仮骨を伸ばしていきます。最終的には骨が元の位置まで伸びて元の大きさになります。イリザロフ法は、骨に装着した固定用ボルトが原因で偽関節になってしまった場合に有効と言われています。
なお、まだ研究段階ですが、新たな治療法も開発されています。骨や血管のもとになる幹細胞を、偽関節の手術に使う手法です。患者から取った幹細胞を注射することで骨の再生が期待でき、副作用もありません。もし、骨折してしまったら早く専門の医療機関を受診し、治療するようにしましょう。
偽関節は骨折の後遺症のひとつで、治りにくく、発症すると半年以上痛みに悩まされることになります。現在は幹細胞を使った治療法など、新しい治療法も出てきているので、医師の指示に従って根気強く治療に取り組みましょう。