記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/2/16
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
歯周病とは、歯周病菌によって歯茎やその周辺の組織が炎症や腫れを起こす病気です。進行すると歯が抜けてしまう怖い病気ですが、歯だけでなく、全身に悪影響を及ぼす恐れがあることが分かっています。どのような影響が及ぶのか、この記事で解説します。
歯周病とは、歯を支える歯茎やその周りの組織が、歯周病菌という細菌によって炎症や腫れを起こす病気です。歯周病は段階的に進行する病気で、歯肉や歯を支える骨が壊れ、最終的には歯が抜けてしまいます。
歯周病の原因となるのが歯垢です。歯垢は歯周病菌のたまり場になっており、歯垢の中にいる歯周病菌の酵素や毒素が歯肉を刺激して炎症を起こすと歯肉炎を発症します。さらに、歯周ポケット(歯と歯茎の境目にある溝)に歯周病菌が増え、炎症が奥にまで及んでしまうと歯周炎になります。歯周炎にまで症状が進行してしまうと、歯を支える骨などの組織が壊れて歯が抜けてしまいます。
歯周病になると、心臓疾患や呼吸器疾患などの全身疾患になりやすいということが明らかになってきました。特に、心筋梗塞などの心臓疾患は、歯周病との密接な関係があります。
歯周病菌は、歯肉から血管を通って心臓に移動します。心臓の中で心筋梗塞の原因となる動脈硬化を引き起こし、アテローム血栓症を発症させます。アテローム血栓症は、酸素や栄養を運ぶ動脈の中で血栓が作られる病気で、血栓が動脈を詰まらせることによって、心筋の一部を壊死させて心筋梗塞を引き起こします。また、歯周病菌は血小板をかたまりにしてしまうため血栓が作られる、とも言われています。
心臓疾患のほかにも、歯周病菌が唾液を通じて肺に入ってしまうと肺炎の原因となります。特に高齢の方の場合、唾液を誤嚥して気管支から肺に入ってしまうことがあるため、注意が必要です。さらに、歯周病は糖尿病にも関係があります。歯周病菌に対する免疫反応によって生じる物質が、血液を通じてインスリン(血糖をコントロールするホルモン)の働きを妨げる作用があることがわかってきました。歯周病菌がこうした病気の唯一の原因という訳ではありませんが、要因のひとつではあると考えられます。
歯周病を予防するためには、歯垢をしっかりと取り除くことが重要です。歯垢は歯磨きで除去することができます。歯肉炎を発症していたとしても、症状が軽度であれば正しい歯磨きで治すこともできます。
歯周病予防に効果的な歯磨きのポイントは、歯周ポケットをしっかりと磨くことです。歯周ポケットは通常1~2ミリ程度ありますが、歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、そこに歯周病菌が入り込むので歯垢を除去しづらくなります。このため、歯周病が進行しないように日々の歯磨きを効果的に行うことが重要です。
歯周ポケットをケアするために、毛先の細い歯ブラシを使用しましょう。ヘッド部分が小さい方が磨きやすいです。歯ブラシを歯と歯茎の境目に、歯ブラシを45度の角度で当てて磨きます。そのとき、歯周ポケットに毛先が入るのを意識してください。1~2本の歯を軽い力で細かく、20回程度ブラッシングしましょう。歯と歯の間も歯垢がたまりやすいので注意してください。必要に応じて、デンタルフロスや歯間ブラシを活用しましょう。
歯周病が進行すると歯を失うことになります。また、歯周病を引き起こす原因となる歯周病菌は、心臓疾患や呼吸器疾患、糖尿病などの重篤な病気の一因にもなります。歯周病を予防するのは日々の歯磨きです。正しく歯磨きを行って、しっかりと歯垢を除去しましょう。