記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/26 記事改定日: 2019/2/20
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
頻繁に尿意を感じて睡眠が途切れ途切れになったり、トイレに辿り着く前に尿が出てしまったりと、生活の質に大きく関わる「過活動膀胱」。
近年、誕生した新薬と従来の薬とはどう異なるのでしょうか?
男性の過活動膀胱の治療についてもあわせて解説していきます。
過活動膀胱とは、急に尿意を催したり、我慢できずに尿漏れが生じてしまう症状を指します。典型的症状は尿意切迫感・夜間頻尿・切迫性尿失禁の3つです。
原因としては、膀胱と脳を結ぶ神経に異常がある神経因性と、それ以外の原因で起こる非神経因性のものに大別できます。
神経因性過活動膀胱は、脳出血や脳梗塞などの脳卒中後の合併症や事故による脊髄損傷や、多発性硬化症などの脊髄神経の障害が原因です。脳と膀胱の神経伝達に異常があり尿意の把握や調整が困難になり、正常に排尿できなくなります。
非神経因性過活動膀胱は神経障害は関係なく、膀胱や尿道を支える骨盤底筋が弛緩したり傷んでしまうことで生じるものです。特に女性の場合、出産経験や加齢で筋力が低下することで過活動膀胱を経験する方が多くなっています。
過活動膀胱では尿意を我慢したり、骨盤底筋の筋力低下を防止する行動療法の選択肢もありますが、一般的には薬物治療が行われています。
特に女性の場合には抗コリン薬が治療薬に選ばれる傾向が強いです。
排尿時には副交感神経からアセチルコリンという神経伝達物質が放出され、膀胱内部は収縮し尿道は緩んで、排尿されます。
抗コリン薬は、膀胱にあるムスカリン受容体と結合して、アセチルコリンの神経伝達を阻止する効果を持っています。その結果、膀胱の異常な収縮が起きないように作用をします。しかしムスカリン受容体は膀胱以外の組織にも分布しているため、口の渇きや便秘などの副作用が起こるというデメリットもありました。
このような問題点を改善した新薬が、β3アドレナリン受容体作動薬です。口の渇き・便秘などの副作用は無く、強い尿意といった症状に対し抗コリン薬と同等の効果を示すのです。ただし動物実験で精巣や子宮の萎縮などが観察されているため、適用対象は中高年以降の女性が中心になっています。
男性の過活動膀胱は前立腺肥大が原因となっているケースが多いです。
このため、治療は前立腺肥大を改善することが主体となります。前立腺肥大では、前立腺や尿道などの筋肉を緩めるα1受容体遮断薬、前立腺の肥大を予防する抗男性ホルモン薬などが使用されます。
また、過活動膀胱の症状が強く、これらの薬で効果がない場合は膀胱の過剰な収縮を抑えるための抗コリン薬が使用されることもあります。ただし、抗コリン薬は尿が出なくなるといった副作用を引き起こすことがあるため、服用を開始した際には尿の排出量に十分な注意が必要になります。
過活動膀胱になってしまうと、「さっきトイレに行ったけれど、また尿意に襲われるかも」という不安が生まれ、外出する機会も減り、酷い場合には一日中家に閉じこもりがちになる方もいます。過活動膀胱は治療可能な病気ですが原因にあわせた適切な治療が重要です。
まずは医療機関を受診して原因を調べてもらい、自分にあった治療を受けるようにしてください。