腎臓病の食事療法のポイント ― おすすめレシピもご紹介!

2018/2/26 記事改定日: 2018/6/20
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓病を発症すると、腎臓の機能(たんぱく質を代謝してできた老廃物を尿として排出する、体内の電解質を調整する)が低下するため、治療の一環で食事療法が行われることがあります。この記事では、腎臓病における食事療法のポイントと食事療法で利用できるおすすめレシピをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

腎臓病になるとどんな症状が現れる?

腎臓はソラマメ状の形をした重さ150gほどの大きさの臓器で、腰の上部に左右1個ずつ備わっています。腎臓の主な機能は、たんぱく質が代謝して精製された窒素酸化物等の老廃物を尿として排出したり、体内のカリウムやカルシウムといった電解質の調整を担っています。また、血圧の調節や赤血球の成熟などに関係するホルモンを分泌する機能も有しています。

腎臓病を発症するとこれらの機能が低下するため、全身にさまざまな症状があらわれますが、初期の段階では症状がないのが一般的です。症状がある程度進行すると、老廃物の排出に影響が出てきます。また、電解質異常によってむくみが出たり、高血圧になることも珍しくありません。

腎臓病の食事療法の目的と注意点とは?

慢性腎炎などの腎臓病では、食事療法が大きな意味を持ちます。腎臓病における食事療法の目的は、腎機能の低下を抑えるとともに、体内のカリウムやカルシウム・ナトリウム等の電解質の量や濃度を正常値の範囲で維持することです。

また、たんぱく質の摂取量を制限し、窒素代謝物による尿毒素が体内に残留することを防止することも目指します。正常な腎細胞であれば窒素代謝物を処理する糸球体が存在しますが、腎臓病になると糸球体に負担がかかりすぎてしまうため、たんぱく質を無制限に摂取してしまうと腎機能の低下が進んでしまいます。

そこで、腎臓病を発症した場合は、たんぱく質の摂取量を標準体重あたり0.6~0.7gに制限します。たとえば、体重が60kgであれば、たんぱく質の摂取量は36~42gになります。

腎臓病の食事療法のコツ ― 食品選びのポイントとは!?

腎臓病の食事療法の基本は、たんぱく質の摂取制限です。魚や肉だけでなく、パンやイモ類、野菜にも含まれるので、食事全般を管理する姿勢が求められます。一方で、肉類などの摂取量が減少すると、エネルギー不足になってしまう可能性があります。したがって、糖分や脂肪分も効率よく摂ることが大切です。1kgあたり35kcalを目安にエネルギー摂取ができるよう調整してください。

腎臓病を発症するとナトリウムの排出機能も低下するため、減塩も大事です。漬物や煮物、ハムなどの加工食品はナトリウムを多く含みますので気をつけましょう。また、レモンや酢の酸味などを活かして、薄味でもおいしく食べる工夫をします。腎臓病が進むと、カリウム制限を指示されることもあります。カリウムは、あらゆる食品に含まれています。カリウムは水に流出しやすいので、野菜などはよく水洗いするようにしましょう。

腎臓病の種類別で食事療法のポイントも違う!?

糸球体腎炎
糸球体腎炎(急性腎炎、慢性腎炎)では、むくみや高血圧の状態に応じて食塩の摂取量を調整します。尿量が減少し始めたら、水分量の制限も始めてください。
ネフローゼ症候群
子供に多いネフローゼ症候群でも食事療法の基本は同じですが、ひどいむくみが出ない限りは水分制限を行いません。
腎不全
腎不全では腎機能の低下が進んでいるので、厳密なたんぱく質制限が不可欠です。血圧やむくみには食塩や水分制限も必要です。また、カリウムやリンの摂取も管理が必要になることもあり得ます。

上記のような特徴はありますが、状態や体質によっても食事療法のポイントが違ってくるので、決して自己判断せず、医師の診察を受けてから行うことを忘れないでください。

腎臓病の人のためのレシピ

腎臓病の人は、食事制限が必要となることもあり、低たんぱく高カロリーのメニューが推奨されています。
ここでは、腎臓病の人でも楽しんで食事療法を行えるよう、おすすめのレシピをご紹介します。

① もやしのペペロンチーノ

食事制限中でもガッツリ主食を食べたくなるときもあるでしょう。しかし、主食には多くのタンパク質が含まれるため、できれば控えたいもの…。そんなときにおすすめなのが、パスタの量を極力減らして代わりにもやしで作るペペロンチーノです。
パスタは一人前の1/4量を程よく茹でます。パスタを茹でている間に、適量のオリーブオイルで刻んだにんにく、鷹の爪をいため、もやし1パックを投入します。しんなりするまで炒めたら、塩コショウ・コンソメで味付けし、茹でたパスタを混ぜ合わせれば完成です。

② ほうれん草のバター炒め

タンパク質の少ないキノコを大量投入することで満腹感のある主食メニューが作れます。
適度に茹でたほうれん草を一口大に切ります。しめじ、えりんぎ、しいたけ、まいたけなどお好みのキノコを適当な大きさに切り、バターでよく炒めます。炒めると小さくなるので、フライパンに溢れるほどいれても大丈夫です。塩コショウやしょう油で味付けし、一口大に切ったほうれん草を混ぜ合わせれば完成です。

③ わらび餅

食事制限でも甘いおやつは楽しみたいものです。腎臓病の人には卵や牛乳を使っていない和菓子をおすすめします。
市販のわらび餅粉を指定された分量に合わせて溶き、冷蔵庫で固めます。弾力が出るくらい固まったら、冷蔵庫から出して切り分け、きな粉少々と黒蜜をかけてできあがりです。暑い季節にも大活躍のおやつです。

おわりに:腎臓病の食事療法では、たんぱく質の摂取制限が必須となる

腎臓病を発症した場合、食事制限でたんぱく質の摂取量を抑え、尿として排出されるべき老廃物を体内に溜め込まないようにすることが大切です。食事制限は決して自己流で行わず、医師の指示を守って行うようにしてください。

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