手根管症候群の手術とリハビリについて

2018/2/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

指がしびれ、うまく動かせなくなってしまう「手根管症候群」。この手根管症候群の治療法として手術がありますが、具体的にどのような手術が行われるのでしょうか。術後のリハビリについても、併せて解説していきます。

手根管症候群の症状・原因とは

手根管症候群は突発的に起こる原因不明の病気で、指の痛みやしびれが生じ、悪化すると指が動かしにくくなり、細かな作業が行えなくなります。手根管症候群は、妊娠や出産を経験した女性や更年期を迎えた女性の発症率が高いことで知られており、他の要因としては骨折などの怪我や、仕事やスポーツで手を酷使している人、透析をしている人によく起こります。

手根管症候群では、手の真ん中を通っている正中神経が手首にある手根管というトンネルのような場所で圧迫を受けることで、指のしびれや痛みといった症状が発生します。最初は人差し指と中指に症状がでて、それから親指にも症状が広がります。手を振ったり指の曲げ伸ばしを行うと症状が緩和することが特徴で、症状が進むと親指の付け根が痩せてきてOKサインが上手につくれなくなり、指の動きが悪くなってきます。

こういった症状が起きるのは、正中神経の通っているトンネルのようなものがむくむことで神経が圧迫されるためだと考えられています。

手根管症候群の治療法と手術

手根管症候群の治療では、どういった状態であっても最初は保存的治療を行います。患部の安静を保つ装具などもありますが、同時にステロイドを手根管内に注射する方法もよく行われており、痛みを抑えるという効果を発揮しています。

このステロイドの注射を数回行っても痛みが改善されない場合には、手術による治療も検討されます。手術療法は正中神経の圧迫を解除するために、手根靭帯を切り離す方法がとられます。手術は患部を切り開いて行う方法以外に内視鏡を使って行う方法があり、内視鏡を使用すると傷が小さく済むために痛みが少なく、短期間で元の生活に戻れるというメリットがあります。

この手術は神経の近くを触るものなので、術中に神経を傷つけてしまうと重篤な合併症を引き起こす可能性があるので、専門医のいる病院で手術を行うほうがいいでしょう。また親指の付け根の委縮が酷い時には、この手術を行っても親指の機能が元通りにならないことがあるため、母指対立再建術も同時に行います。

手根管症候群のリハビリについて

手根管症候群では患部を安静に保つことが重要ですが、手根管内を腱が通るために、その筋肉を柔らかく保つストレッチや運動を行うことも効果的です。

手首のストレッチとしては、腕を肩の高さにあげて親指を中に入れて手を握り、手首を小指の方向へ曲げて10秒ほど保持してから、手首と指を曲げてもう一方の手で手を体の方向に曲げて10秒保持します。今度は反対側に手首を反らすようにして壁を手のひらで押しながら固定し、反対の手で手首を上から押して手首の内側を伸ばし、10秒保持します。

もうひとつのリハビリは、腱のグライディングエクササイズです。手を立たせた状態にして指をしっかりと反らせてから、指を曲げて拳を作り、第一関節をまっすぐにした拳に変えていきます。そして第1・第2関節は伸ばし、第3関節を曲げるL字のような形を作り、今度は反対に第3関節はまっすぐにしたまま、第1・第2関節を曲げて、指の先だけが曲がっている状態を作ります。この5つの姿勢を7秒ずつ保持し5セット行います。

おわりに:手根管症候群の手術後は、継続的なリハビリを

手根管症候群は保存療法や手術によって治療可能ですが、手術後は根気よくリハビリを続けることが大切です。自宅で手軽に行えるセルフケアとして、ぜひ参考にしてください。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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