慢性中耳炎の手術療法のひとつ、鼓室形成術について

2018/3/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

継続的な耳だれが起こったり、聴力低下が見られたりする「慢性中耳炎」。今回の記事では、この慢性中耳炎を治療する手術のひとつ「鼓室形成術」を中心に解説していきます。

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慢性中耳炎の基礎知識

慢性中耳炎は中耳腔に慢性的な炎症が持続することで、持続的に耳だれが起こる状態です。同時に鼓膜や耳小骨にも異常を抱えているため、聴力障害も伴うことがあります。慢性中耳炎は、鼓膜に穿孔が出ている慢性単純性中耳炎と、鼓膜が中耳腔に癒着してしまっている癒着性中耳炎に分けられます。

慢性中耳炎は、子供の頃にかかった中耳炎が慢性化したり、炎症が長期間持続したことが原因で発症します。長期間炎症がコントロールされず、線維性組織が増殖し肉芽組織が形成されたことで細菌が棲みつきやすくなり、持続的な耳だれを引き起こします。

慢性中耳炎では耳だれの他に、耳鳴りや難聴なども生じることがあります。これは耳小骨の運動性の低下や、中耳の炎症が内耳に波及することで感音性難聴が出てくるためです。治療では、中耳腔内の乾燥した状態を維持し、聴力の改善を目指す手術などを行います。

鼓室形成術の方法とは?

慢性中耳炎の聴力障害を改善するには、手術が必要です。慢性中耳炎が原因の感音性難聴は、耳小骨の運動性に障害が出てしまい、耳の奥にある内耳に炎症が波及し、伝音連鎖(鼓膜がキャッチした音の振動を増幅させ、内耳へと伝える耳小骨の動き)が破壊されてしまうことによって起こります。

鼓室形成術とは、炎症の持続で破壊されてしまった伝音連鎖を再建させる手術です。手術は耳介部の後方、耳たぶの付け根を切開し、耳介の後方から中耳腔に術野を確保して行います。まず、異常のある耳小骨を取り除き、中耳腔内の清掃をします。その後、本人の他の部位から軟骨を採取したり、人工骨を用いて耳小骨の再建を行います。最後に鼓膜の穿孔部分の閉鎖も行い、手術は終了します。

麻酔は部分麻酔と全身麻酔の場合があり、入院期間は一般的に2〜3週間程度を要します。鼓室形成術は破壊され機能が障害を受けた耳小骨を再建するので、聴力の改善を期待できます。

「鼓膜形成術」と「鼓室形成術」はどう違うの?

慢性中耳炎の手術は患部の状態によって、鼓室形成術と鼓膜形成術に分かれます。どちらの手術が適合するかは、事前のパッチテストで確認をとります。パッチテストとは、穿孔部位を一時的に閉鎖し、聴力が改善するかを調べる検査のことです。聴力の改善が見られる場合、耳小骨にまで異常が起きていないことを意味するので、鼓膜形成術が適合すると判断されます。

鼓膜形成術では、穿孔部位の閉鎖に使う皮下組織の採取をし、採取した皮下組織を中耳腔に縫い付け、穿孔を閉鎖して終了します。手術時間は30分程度で、日帰り手術も可能です。

一方、穿孔部位を閉鎖しても聴力が改善しない場合には、耳小骨にまで異常が波及しているため、穿孔部位の閉鎖だけで聴力改善は見込めません。破壊された耳小骨の再建が必要な状態になっているからです。

おわりに:慢性中耳炎の進行度に合った手術法を

慢性中耳炎の手術の方法には、鼓膜形成術と鼓室形成術があります。慢性中耳炎の進行具合によってどちらの手術が適しているかは違ってくるので、専門外来で検査を受けるところから始めましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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