記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/21
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
ほとんどの子どもは、少なくとも年1度は頭痛を訴えています。しかし成長期の子どもの頭痛は、成人の頭痛とは異なる症状を呈するため、医師でさえ気づかないことがあります。ここでは、子どもの頭痛の特徴と予防法について解説します。
子どもが訴える頭痛や偏頭痛(へんずつう)は、成人の長く引きずる頭痛と異なり、はるかに短く、回復もはやいことがわかっています。
突然、頭痛が始まり、顔が青白くなって、吐き気や嘔吐(おうと)がみられることもあります。30分後には回復して、何事もなかったかのように遊び出します。
また子どもの頭痛は、胃にも影響することがあり胃痛はよくある症状です。
子どもはめったに頭痛を訴えることはありませんが、昼食を抜いたり、1日中ほとんど飲み物を飲まなかったりといった理由で頭痛を訴える子どもが多いといわれています。
頭痛を起こさせないために親ができることは、定期的な食事と飲み物を用意し、十分な睡眠を取らせるようにすることです。
しっかりと朝食をとれば、たとえ昼食を食べ損ねたとしても1日を過ごせます。また、毎晩同じ時間に寝る習慣をつけることも、次の日の活力になります。
子どもは、運動中に頭痛を起こすことがあります。これは、運動することで脱水と血糖低下が原因です。
運動前、運動中、運動後にたくさん水を飲み、グルコース錠(ブドウ糖錠)を摂るようにしましょう(薬局やスーパーマーケットで購入できます)。グルコース錠(ブドウ糖錠)は食事やおやつを食べたのと同じ効果が得られ、運動による低血糖状態を改善できます。
ときに、頭痛は精神面にも影響を与えてしまいます。子どもは、学校でのいじめや親の離婚といったストレスで頭痛になることがあります。親はよく「うちの子は離婚の事実を受け止めているし、新しい親になる人がやってきても大丈夫でしょう」といいますが、子どもにとってこれは表面上であり、内面は傷ついています。「幸福ではない」という思いが頭痛としてあらわれるといわれています。
「頭痛日誌」をつけましょう。子どもが学齢期なら本人に書いてもらうとよいでしょう。頭痛の記録を残すことで、頭痛の原因になるものを解決することができます。
日本頭痛学会では『頭痛ダイアリー』を作成していますが、自分なりの「頭痛日誌」を作成してみるのもよいでしょう。どのようなことを書けばいいかは、以下を参照してください。
・頭痛が起きた日時
・普段と違う出来事
記入例:
○月○日(○曜日)○時ころ
食事を食べ損ねた、運動をした、あるいは夜更かしした、精神的に落ち着かない出来事(試験、友だちや家族とのけんかなど)
数カ月後、子どもと一緒に日誌を読み、頭痛の原因となるものにパターンがあるかどうかを確認します。考えられる原因が特定できたら、その原因になるものを数カ月ほど控え、頭痛が解消されるかどうかみてください。
多くの場合、簡単な方法で頭痛や片頭痛に対処することができます。
・静かや暗い部屋で横になる
・額や目の上に冷たくて濡れた布を置く
・楽に、深く呼吸する
・睡眠をとるよう促すと、回復が早くなる
・食べたり飲んだりすることを勧める(ただし、カフェインを含む飲み物を除く)
頭痛自体はそれほど深刻な問題ではありませんが、市販の鎮痛薬アセトアミノフェンとイブプロフェンはどちらも安全で子どもの頭痛にもよく効きます。
小さい子どもは錠剤よりもシロップのほうが飲みやすいでしょう。鎮痛薬は、できるだけ早く服用すれば効果があります。
子どもの頭痛は、鎮痛薬と十分な食べ物と飲み物、十分な睡眠がとれれば回復します。しかし、子どもが頻繁に頭痛を訴えるなら、ためらわず医師に相談してください。子どもの頭痛は、親への救助信号かもしれません。