膿胸、不整脈、肺炎etc・・・肺癌の開胸術による合併症とは?

2018/3/5

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

肺癌の治療では、胸壁を切開し、胸腔を露出させて行う「開胸術」が実施されることがあります。今回は、開胸術の術後に起こる可能性のある合併症についてお伝えしていきます。

肺癌の手術法「開胸術」について

開胸術とは、胸壁を切開して胸腔を開放する手術法をいいます。肺癌では、症状の進行度合いによってこの開胸術が適応になることがあります。

肺癌における一般的な開胸術では、患者の肩甲骨に沿って背中側から胸部側面まで切開し、肋骨間を器具で広げるという方法が標準的な開胸術として行われることが多くなっています。なお開胸術は皮膚の切開部位によって、後側方開胸法、腋窩(えきか)開胸法などと名称が異なります。後側方開胸法は肩甲骨と背骨の間から乳頭の下部にかけて、腋窩開胸法は脇の下から脇腹にかけて縦方向に切開していく方法です。

このように皮膚の切開部位で名称が異なっていますが、肺癌の広がり具合や腫瘍の大きさ、性質に応じて片肺すべてを取り除く全摘術、病巣がある肺葉のみを取り除く肺葉切除術、肺葉内の区域にある病巣のみを除去する縮小術、さらに縮小術で区域内にある病巣を除去していく楔状(けつじょう)切除の4つに分類されています。

どんな合併症が起こる可能性が高いの?

肺癌で開胸術が適応された際、場合によって手術後に合併症を生じる可能性があります。手術後に引き起こされやすい可能性がある代表的な合併症としては膿胸(のうきょう)、不整脈、肺炎の3つが挙げられます。

まず膿胸とは、創傷部が感染症を引き起こして化膿してしまい、肺の周囲に膿が貯留する疾患です。

次に不整脈は、心拍数のリズムが乱れて動悸やめまいなどが起こるものですが、特に左肺葉を切除した場合に起こりやすく、心臓機能に関与する迷走神経や心肺血管系への影響に起因するものと考えられています。

最後に肺炎ですが、開胸術では手術後に切除部から軽度の出血が生じたり、気道から生じる痰などの分泌物が増加しやすくなったりします。これら痰などの分泌物は本来であれば体外に排出されるべきものですが、創傷部の痛みなどで咳がしにくくなり、上手く排出ができなくなると、分泌物が気管支に貯留して炎症を起こし、肺炎に繋がることがあります。

膿胸を発症したらどうやって治療するの?

通常、胸部には胸壁と肺との間にそれぞれ胸膜という膜があり、その胸膜の間にある胸腔というスペースには少量の水分が貯留しています。これを胸水と言い、胸水には臓器の摩擦を軽減させる役割がありますが、肺癌などではこの胸水が増加しやすくなります。そして増加した胸水が細菌によって感染してしまうことで、炎症を起こして膿が生じてきます。特に手術後は細菌が侵入しやすい状況であり、また体力が低下していることも要因となって、感染症から膿胸を引き起こす可能性が高くなります。

なお、膿胸は進行すると生命にかかわる場合もあるため、治療が重要です。治療法については膿胸の原因の多くが細菌によるものであることから、抗菌薬などによる薬物療法や、細菌巣や膿などを体外に排出・洗浄する胸腔ドレナージの他に、症状によっては外科的な開窓術もしくは肺剥皮術などの手術を行うことがあります。

おわりに:開胸術に伴うリスクをしっかり把握しておこう

肺癌の治療で開胸術を実施した場合、創傷部に痛みが生じたり、細菌が侵入しやすくなったりするため、肺炎や膿胸などの合併症が起こる可能性があります。リスクや発生率などについて専門医からきちんと説明を受けた上で、手術に臨みましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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