記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/2/15
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
歯磨きは、虫歯予防のためにはなくてはならないものです。こちらの記事では、歯磨きが重要視される理由や正しいやり方、歯磨きのタイミングと回数、活用したいアイテムについて解説します。
口の中の細菌がプラーク(歯垢)を餌にして酸を発生させると、この酸が歯の表面を溶かし、虫歯が生じます。特にプラークを放っておいて石灰化させると歯石となり、セルフケアだけでは取り除けなくなるため、注意が必要です。虫歯の予防のためには、細菌とともに虫歯の原因となるプラークを日頃からしっかりと取り除くことが望ましいと言えます。
ただし、正しいやり方で行わなければ、いくら歯磨きをしても虫歯予防の効果は見込めません。歯磨きの際には、弱い力でブラシを小刻みに動かすことを心がけ、プラークの付きやすい箇所を意識すると良いでしょう。プラークは、歯間や、歯と歯肉の境目、奥歯の噛み合わせのでこぼこしているところなどに付着しやすいものです。特に歯間には歯ブラシの毛先が届きにくいため、デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシなどを使用して取り除きます。
近年、食後すぐの歯磨きは避けた方が良いと言われることがあります。これは、炭酸飲料や柑橘類などの酸性の食品を摂取したことから、食後すぐに歯磨きを行うとエナメル質が溶けて「酸蝕症」が起こりやすくなると指摘されているためです。
ただし、食後すぐの歯磨きが悪影響とされるのは、強い酸性の食品を摂ったあとに限られており、日本口腔衛生学会や日本歯科保存学会、日本小児歯科学会は、歯に付着したプラークを取り除く虫歯予防という観点から、食後はなるべく早めに歯磨きを行うことを推奨し、酸性の食品の摂取後は歯磨きのタイミングを考慮することを勧めるとの見解を発表しています。
歯磨きをする回数や時間に関しても、1日3回短い時間に歯を磨くよりも、1日1回就寝前に15~20分程度かけて徹底的に汚れを取り除く方が良いなど、新たな見解が登場しています。
歯磨きはできるだけ食後に行うことが理想とされていますが、時間がなくて難しい場合などには応急的にキシリトール入りのガムを噛むことも一つの手段となります。キシリトールとは、飴やガムなどに含まれる甘味料の一種であり、歯を溶かす酸を生じない糖分です。虫歯の原因となるミュータンス菌はキシリトールを分解できず、むしろ活動が抑えられることから、キシリトールは虫歯予防に良いとされています。
歯磨きの際に使用したいのは、フッ素(フッ化物)が含まれる歯磨き剤です。食事の後に歯は酸によって脱灰(表面からミネラルが溶けること)してしまいますが、フッ素は歯の再石灰化を促します。フッ素には歯を丈夫にする作用もあるため、虫歯予防のためにはフッ素入りの歯磨き剤を活用することが勧められています。
虫歯予防のためにはまずは正しいやり方で歯磨きを丁寧に行うことが第一です。歯間や歯と歯茎の間のプラークは取り除けているか、さらには回数やタイミングなどにも注意する必要があります。キシリトールやフッ素も活用しながら、正しい歯のお手入れを心がけましょう。