記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
初夏の時期からは特に注意したいのが、家庭内の食中毒です。今回の記事では、家庭内の食中毒を予防するために知っておきたい「食中毒予防の三原則」を中心にお伝えしていきます。
食中毒の原因になるのは、主に細菌、ウイルス、原虫等の感染です。細菌は温度や湿度の条件がそろうと食物のなかで増殖を開始し、それを口にすることで食中毒を引き起こすようになります。ウイルスは食品のなかで増殖することはありませんが、食べ物を通じて人体に侵入すると腸管内部で増殖し、中毒症状を引き起こします。
なお、食中毒は飲食店だけでなく、一般家庭でも発症するリスクのあることです。調理の際は、「肉類や魚類は何らかの細菌等が付着している」という前提で細心の注意を払ってください。また、つり革やスマートフォンなど、日常的に色々なものに触れることの多い手先にも雑菌が付着しています。雑菌が付着した手を洗わずに皿などに接触すると感染源を拡散させるリスクが高まるので、調理中は頻繁な手洗いを心がけましょう。
食中毒は、細菌やウイルスが付着した食べ物を体内に取り入れることで発症します。
まず、細菌性の食中毒を予防するためには
の三原則を順守することが重要です。
一方、ウイルスの場合は食品中では増えることはありません。
ただしウイルスは乾燥に強く、わずかでも体内に侵入すると体内で活性を取得し、一気に増殖する傾向があるので、ウイルスは「付けない」ことが重要です。
調理者はもちろんのこと、調理器具や調理環境全体でウイルスをもちこまない態勢を整えましょう。
持ち込みを完全に防げなくても、広げないことに注意することが重要です。
食中毒を防止する上での基本は、正しい手洗いの実践にあります。ただ、単に水で洗い流すだけでは雑菌を除去することは困難です。正しい手洗い方法を確認しておきましょう。
まず、手を流水で良く濡らした後、石鹸をつけ手のひらを良くこすります。手の甲や指先や爪の間なども忘れずにこすってください(特に指の間は洗い残しやすい場所です)。最後に親指を手のひらでねじるようにこすって、手首もしっかり泡立て流水で洗い流します。
また、手洗いは「いつ」洗うのか、タイミングが重要です。調理場に入る前は当然ですが、今後加熱しない食材に触れる前や盛り付け直前などは先に手洗いをしておきます。トイレの後やゴミ処理の後、微生物の汚染が懸念される食材に触れた後にも、手洗いを忘れないようにしてください。
食中毒になってしまった場合には、自身の回復を目指すこととともに周囲への感染を拡げないための対策を行うことが大切です。
回復を目指すためには、胃や腸の炎症を改善するために消化が良く粘膜に刺激にならない食事を心がけることが大切です。
また、下痢や嘔吐、発熱などの症状がある場合には脱水にならないよう電解質の含まれた水分をこまめに摂るようにしましょう。小児や高齢者は脱水になりやすいため、吐き気などで十分な水分が摂れない場合は点滴治療が必要になることもありますので、なるべく早く病院を受診することもポイントです。
一方、周囲に感染を拡げないためには、手洗いや手指消毒を徹底すること、排便後は便座やレバーなどを消毒することが大切です。また、腸管出血性大腸菌などでは登校・通勤が制限されるケースがありますので、必ず医師や保健所の指示に従うようにしてください。
食中毒をもたらす細菌やウイルスは、気づかないうちに調理器具や手などに付着していることがあります。今回ご紹介した三原則を徹底して、未然の予防に努めましょう。