記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/16 記事改定日: 2020/2/6
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ストレスを感じており、風邪を引いたわけでもないのに熱が出た場合、「心因性発熱」の可能性があります。今回はこの心因性発熱の特徴や、風邪での発熱との違い、治療法などを詳しくご紹介していきます。
風邪などの原因が無いにもかかわらず発熱があり、かつ精神的ストレスがある場合、心因性発熱の可能性があります。
ただし、医学的にはほとんどの発熱には何らかの心理的以外の原因(自己免疫疾患、感染症、悪性腫瘍などをはじめとする)があるので、あくまでもそれらが原因ではないと確認がとれたうえでの話です。
心因性発熱はストレスの種類や受け方の違いによって、「高熱タイプ」と「微熱タイプ」の2つがあります。
高熱タイプの発症原因は、極度の緊張やトラブルなどの精神面にあります。
例えば、手術当日の朝に39℃の高熱が出たにもかかわらず、手術中止と決まったとたん解熱した場合、高熱タイプの心因性発熱の可能性があります。
原因が解消すると解熱するものの、ストレス要因を解決しなければ再発するのが特徴です。
微熱タイプの心因性発熱の場合は、連日の残業や介護疲れなど慢性的なストレスや複合的なストレスによって37℃台の微熱が続きます。
働き盛りの世代に多く、頭痛や倦怠感を伴う微熱が続き、ストレスの原因が解消された後もしばらく心因性発熱が継続することもあります。
ストレスが原因で起こる心因性発熱は、風邪などによる発熱とは発症のメカニズムが違うため、解熱剤では熱が下がらないという特徴があります。
風邪をひいたときの発熱はウイルス感染が原因で起こる炎症が信号となり、脳が交感神経と筋肉に指令を送って体温を上昇させ、ウイルス迎撃態勢に入ったという反応です。
その際信号になるのが炎症性サイトカインとPGE2という物質で、解熱剤はPGE2の産生を抑制することで熱を下げます。
しかし心因性発熱の場合は、ストレスに対処するため交感神経の働きが活発化し体温が上がったのであり、風邪のように炎症は起こっていません。
つまりサイトカインとPGE2は関与していないので、PGE2に対して効き目をあらわす解熱剤を服用しても熱は下がらないことになります。
また、病院で血液検査をしても炎症反応がみられず、発熱の原因となるような感染症や自己免疫疾患、悪性腫瘍といった器質的疾患と呼ばれる病気が見つからないため、病院で診察や検査を受けても、心因性発熱の場合は異常なしとされることもあります。
ストレスによる心因性発熱を発症する方は思いのほか多く、原因不明の微熱が続いている方の約半数が心因性発熱であったとの報告もあります。
心因性発熱は次のような特徴があるため思い当たる症状が多い方は、一度病院で相談することをおすすめします。
心因性発熱と診断された場合、生活指導や薬物療法、自律訓練法等のリラクゼーショントレーニングや心理療法のほか、ストレスから起こっている他の身体疾患や精神疾患の治療が併せて行われます。
特に生活指導が重視され、心因性発熱が続いている時期には日常生活のペースダウンと、十分な睡眠時間の確保が必要です。
また、心因性発熱を治療する一環と考え
ようにしましょう。
ストレスが原因で発熱を起こしているため、頑張ろうと無理をすること自体が治癒の妨げとなるので、治療の期間中に心身を鍛えようとは思わないことも重要です。
心因性発熱の治療で最も大切なのは発熱の原因となるストレスや悩みなどを解決し、心身ともにリラックスした状態で過ごせる生活へと導く「生活指導」です。
しかし、なかにはうつ病や不安障害、パニック障害など治療が必要な精神的疾患が原因のものもあります。このような場合には、それぞれの疾患に適した抗うつ薬や向精神薬、抗不安薬などが使用されることもあります。
一般的な風邪などでは、解熱鎮痛薬を使用することが多いですが、心因性発熱の場合には効果がないことも多々あります。また、副作用が出る可能性もあるため自己判断で市販薬を服用するのはやめましょう。
心因性発熱は、解熱剤を服用して解消するものではなく、根本原因であるストレスに対処する必要があります。十分な休養をとり、何事もほどほどに行うよう心がけることが大切です。