記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/3/6
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
近年、歯周病や虫歯予防に効果があるとして、乳酸菌の一種「ロイテリ菌」が注目を集めています。今回の記事ではロイテリ菌の概要と、ロイテリ菌を使った新しい歯科治療についてご紹介していきます。
乳酸菌のひとつであるロイテリ菌は、乳酸菌の中でも珍しいヒト由来の菌で、ペルー人の母乳から発見されました。フィンランド人の母乳や日本人の口腔内から分離した菌床もあり、大学など多くの研究機関で研究が続けられています。
腸を含めた消化器官に長く留まって生息できると言われるロイテリ菌は、ロイテリンという抗菌物質を作り出すことがわかっています。このロイテリンは、腸の中で悪玉菌が増えるのを抑え、腸内細菌のバランスを整えてくれると言われています。
ロイテリ菌には、腸内環境を整える効果だけでなく、虫歯や歯周病を予防する効果もあると言われています。
先ほどお話しした、ロイテリ菌が作り出す抗菌物質・ロイテリンは、虫歯や歯周病の原因菌に対して殺菌作用があることがいくつかの研究によって明らかにされています。ある研究によると、主な歯周病菌8種類のうち、5種類の増殖を抑える効果があるそうです。
また、原因菌の増殖を抑えるだけでなく、虫歯などの原因となるプラーク(歯垢)を分解する働きもあると言われています。
ロイテリ菌と共に注目されているのが、バクテリアセラピーです。
バクテリアセラピーとは、ロイテリ菌を使った虫歯・歯周病の予防や治療のことです。主にロイテリ菌が含まれたタブレットを毎日なめるという方法で行われます。1か月ほど続けると、少しずつ変化が実感できるようになると言われています。
バクテリアセラピーで使われるタブレットは医薬品ではありませんが、ヒト由来のロイテリ菌が使われていますので、安心・安全に使用することができます。
バクテリアセラピーで得られる効果としては、まず口腔内への良い影響が挙げられます。虫歯の原因菌が約80%、歯周病の原因菌が約90%減少するほか、臭いや不快感が気にならなくなるとされています。
バクテリアセラピーの効果は、それだけではありません。ロイテリ菌が胃や腸まで届くことで、胃炎や胃癌の原因となるピロリ菌が減ったり、便通が整ったりする効果が期待できます。また、全身への影響として、アレルギー症状が軽減されたとの報告もされているそうです。
バクテリアセラピーという名前だけを聞くと、少し怖いイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、使われているロイテリ菌は非常に安全性が高く、方法もタブレットをなめるだけという簡単なものです。口腔内や全身の健康を守るひとつの方法として、検討してみてはいかがでしょうか。