記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
リレンザ®などのインフルエンザ治療薬は、発症を防ぐために使用されることがあります。こちらの記事では、抗インフルエンザ薬の予防投与の効果や継続期間、対象となる条件について解説します。
インフルエンザにおいての予防投与とは、インフルエンザを発症した人と接触するなど、インフルエンザウイルスに感染しているおそれが高い場合に、抗インフルエンザを投与して発症を予防することです。主に家族などの濃厚に接触する人がインフルエンザに罹患したケースなどで行われており、発症前に抗インフルエンザを服用することで、インフルエンザの発症を抑えたり、発症した場合でも比較的軽症で済んだりする効果が期待されています。
また、入院施設を備えた医療機関や高齢者施設でインフルエンザ発症者が生じた場合、集団感染を防ぐため、同室の患者などに抗インフルエンザ薬を予防投与することが推奨されています。
予防投与の開始時期は可能な限り早いほうが良いとされています。使用される薬剤にもよりますが、できれば発症者に接触してから12~24時間以内、遅くとも48時間以内に使用を開始しなければなりません。
予防投与では、以下3種類のノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれる抗インフルエンザ薬が用いられます。
リレンザ®は吸入薬(口から薬剤を吸い込む薬)です。予防投与で用いる場合には、感染症患者に接触したあと1.5日以内に服用を開始し、大人も子供も1日1回10mg(2回吸引)を10日間継続します。
経口薬のタミフル®には、カプセル剤と散剤(ドライシロップ)があります。予防投与では接触後2日以内に服用を開始します。用量は、大人は1日1回75mg(1カプセル)を7~10日間、子供は1日1回体重1kgあたり2mgを10日間です(37.5kg以上の子供で1日1回1カプセルとされています)。
イナビル®は吸引薬です。予防投与は感染者への接触後2日以内とされ、成人ならびに10歳以上の子供は1日1回20mg(1容器分)を2日間、もしくは40mg(2容器分)を1日のみ服用します。10歳未満の子供の場合は、20mg1回のみの服用です。
どの薬も、予防投与の場合は治療で用いる場合の半量・倍の期間の使用が原則です。
抗インフルエンザ薬の予防投与では、効果が続くのは基本的に薬を服用している間です。どの薬であっても継続期間は大体1週間から10日間と言われています。
また、「予防」という言葉からインフルエンザのワクチン接種と混同されがちですが、抗インフルエンザ薬と予防投与と予防接種は異なります。予防接種は数週間~数ヶ月間のインフルエンザの重症化を防ぐものであるのに対し、予防投与は発症者と濃厚接触した場合に発症を抑えるための措置として行われるもので、あくまでも効果が持続するのは投与している期間のみです。
なお、抗インフルエンザ薬の予防効果は高いとは言われており、国内外でも予防効果を実証する研究結果は報告されていますが、必ず発症しないとは限りません。
抗インフルエンザ薬の予防投与が受けられる人は、原則的にインフルエンザを発症している人と同居している、なおかつ以下にあてはまる人と定められています。
・65歳以上の高齢者
・慢性呼吸器疾患もしくは慢性心疾患を持つ人
・糖尿病などの代謝性疾患を持つ人
・腎臓に障害を持つ人
上記から外れても、近々受験を控えているケースや、子供が罹患し、その保護者が罹患すると立ち行かなくなってしまうケースなどにおいて、医師の判断で予防投与が行われることはあります。
妊婦への予防投与に関しては、投与の有益性がリスクを上回る場合に限って投与すべきとされていますが、危険性は低く、投与のメリットは大きいとの見方が一般的です。授乳婦が抗インフルエンザ薬を服用した場合は、その後の授乳は避けたほうが良いと言われています。
抗インフルエンザ薬の予防投与は健康保険の適用外であり、自費診療となります。そのため、思っている以上に費用が高くなってしまう可能性があります。医療機関や使用される抗インフルエンザ薬の種類によって異なりますが、5,000~8,000円程度の費用が必要になると考えておくと良いでしょう。
また、胎児や乳児への重大な影響はほとんどないとは言われていますが、授乳婦が抗インフルエンザ薬を服用した際には授乳は避けることとされています。そのため、妊娠中の女性や授乳中の女性は、医師とよく相談しながら投与するかどうか決める必要があるでしょう。
抗インフルエンザ薬の予防投与は、インフルエンザの発症を抑える上で有効な手段です。条件は定められてはいるものの、それ以外の人でも医師の判断で認められることがあるので、特別な事情がある人は医師と相談してみましょう。