記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病には肥満が関連していることが多く、実際患者さんの多くは体重を減らす必要がありますが、中には勝手に体重が減っていく患者さんもいます。しかし、この痩せる兆候は、実はキケンなサインなのです。その理由と改善方法について解説します。
体重が増加し「糖尿病」と診断されると、治療とともに食事制限や運動の指導がある場合がほとんどです。通常は、適切な指導に基づき体重を減らすことで症状の改善が可能ですが、そのまま何もせずに食べ続けてもやせていくのであれば、病状が危険な状態にまで進行している可能性があります。
人間の身体は、食べたものの栄養を体内で消化・分解し、ブドウ糖を作ります。そこで重要となるのが、インスリンの働きです。インスリンは、細胞にブドウ糖を運び、血液を介して臓器に栄養を届けられる状態にします。また、エネルギーとしての利用を促進し、貯蔵されている糖が分解されないように抑制します。しかし、病状が進行するとインスリンが分泌されず、ブドウ糖を細胞に運べないまま、これまで蓄積していた筋肉や脂肪からエネルギーを使うようになり、体重減少が起こります。この症状は「糖代謝の異常」と呼ばれ、身体が新たにエネルギーが作れず正常に臓器を動かすことができなくなってしまう状態です。
重度の糖尿病の一番わかりやすいサインが、比較的早く起こる「異常なほどののどの渇き」という症状です。血液中に増えすぎた糖が体内の水分とともに尿となってどんどん体外に排出されることで、のどが渇きます。しかし、エネルギー源である糖が吸収されないので脳が飢餓感を察知して、さらに甘いものを欲する指令を出し、飲んでも吸収されずさらに飲むという悪循環に陥ってしまいます。
次にわかりやすいサインは「異常な食欲」です。のどの渇きと同様に、食べても吸収されずに流れ出てしまうので空腹を感じ、食欲が旺盛になりますが食べても急激にやせていってしまいます。
もうひとつ、「疲労感・倦怠感」というサインも重要です。寝ても食べても、リラックスしても、異常なほどのだるさがとれません。インスリンの働きが悪化することで身体に必要な栄養素の代謝が悪化すること、排泄の際に体内のビタミンやミネラルも排出されてしまい細胞や筋肉の働き、血流が悪くなることが原因といわれています。
どんどんやせるという糖代謝の異常は、インスリンを身体に注入して分泌や働きをコントロールし、同時に運動で高血糖状態を改善することで解消することができます。糖尿病にはインスリンの絶対量が足りない1型糖尿病と、遺伝的要因と肥満や運動不足、過剰なストレスなどで発症する2型糖尿病があり、95%は2型糖尿病です。どちらも足りないインスリンを補うのが治療の中心となりますが、2型は機能が回復すればインスリン注射をやめることも可能といわれています。体重減少が治まれば、新たに食べたものから得る栄養でエネルギーを生産できるようになっていきます。
ただし、この解消法が有効なのは、初期段階で気づいた場合だけです。すでに進行していると体重減少は治まらず、糖尿病の合併症のリスクが高まります。合併症では失明や腎臓機能の低下、神経の異常、脳梗塞、心筋梗塞などが起こり、最悪の場合は死に至ることもあります。
自分自身の理想的な体重を計算し、それを基に1日の摂取カロリーを出すことができます。理想体重は「身長(m)×身長(m)×22」で計算することができます。また、一日に必要な摂取カロリーは、理想体重に25~30を掛けた数字になります。たとえば身長が160cmであれば、理想体重は1.6×1.6×22=56.32 で約56kg、一日に必要な摂取カロリーは、56kg×25=1,400kcal~56kg×30=1,680kcalとなります。
糖尿病でどれだけ食べても体重が減ったとしたら、それは糖尿病の重症化のサインです。早めにインスリンを補うことで改善が可能ですが、進行してしまうと合併症を起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。放置せず、すぐに医療機関に受診し治療を受けることが大切です。