記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/1 記事改定日: 2019/7/4
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が重要ですが、その食事療法の一環として、塩分制限があります。ただ、「塩分制限は高血圧の人に必要なだけでは?」「糖尿病でもなぜ塩分制限が必要なの?」と疑問に思う患者さんも少なくありません。今回はそんな疑問にお答えします。
糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気のため、炭水化物や甘いお菓子などの糖類の摂取制限に目が行きがちですが、実は塩分も制限する必要があります。それは以下のことが原因です。
国内の2型糖尿病患者を対象とした研究で、塩分過多の食事は心血管疾患の発症リスクをおよそ2倍に上昇させ、また脳卒中のリスクも上げることが判明しました。
特にHbA1cが9.0%以上の糖尿病患者は、塩分の過剰摂取で心疾患の発症リスクが10倍近くに跳ね上がるというデータも得られています。
糖尿病患者は血中の余分なブドウ糖によって、すでに血管が傷つきやすい状態になっています。その状態で塩分を過剰摂取すると高血圧を招き、動脈硬化が進行していきます。
すると糖尿病性腎症(高血糖により腎臓の毛細血管が傷つき、ろ過能力が低下する病気)の発症・悪化リスクが上昇します。
塩分の摂取と糖尿病性腎症の関係性を、もう少し詳しく説明しましょう。まず、塩分を摂りすぎると血中のナトリウム量は増えるため、体内では血圧を上げて血流量を増やすことでナトリウムの濃度を薄めようとします。
そこで腎臓は過剰なナトリウムを排出するためにろ過作業をするのですが、そもそもの血流量自体が増えてしまっているため、腎臓は疲弊して機能が低下し、糖尿病性腎症の発症リスクが上がってしまうのです。
糖尿病患者向けの診療ガイドラインでは、「高血圧を合併している場合や顕性腎症以降の腎症の合併を伴う場合は、1日の塩分摂取量を6g未満に制限すること」と指示しています。
特に外食や加工食品は塩分をたくさん含んでいるため、糖尿病患者はなるべく自炊をし、塩分量を測りながら調理しましょう。
ただ、いきなり塩分量を減らすと挫折につながる恐れもあるので、香辛料や薬味、酸味などを活用しながら味を補う工夫が必要です。
暑い夏場や運動後など、汗をたくさんかいたときは水分だけでなく電解質も失われます。そのため脱水症になったときは、水分のみを補給していても改善しません。
汗をかいたときは水分の他にも塩分を含めた電解質の補給が必要です。体に必要な電解質を含んだ経口補水液やスポーツ飲料などを摂取するようにしましょう。特に糖尿病の人は、糖分が含まれたスポーツ飲料よりも経口補水液がおススメです。
ただし、糖尿病による腎障害などの程度によっては水分制限や厳密な塩分制限が必要な場合もありますので、普段から食事制限や運動制限などの指示を受けている人は必ず医師に相談し、適切な方法で摂取するようにしましょう。
糖尿病患者は塩分を摂りすぎると、心疾患や脳卒中、糖尿病性腎症の発症リスクを高めるため、摂取量に制限が必要です。調理方法を工夫しつつ、塩分は一日6g未満に留めましょう。