男性の不妊治療と不妊の原因 ― どうやって不妊を解消すればいい?

2018/4/20 記事改定日: 2018/7/23
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

不妊治療は女性がするもの、と思っていませんか。実は、不妊の原因が男性にあるケースもあることが明らかになっています。この記事では、男性の不妊治療について解説したいと思います。妊娠に悩む夫婦やカップルは参考にしてください。

不妊の原因は男性にもある

これまで、不妊の原因は女性の問題と考えられてきたため、不妊治療は女性が受けるもの、というイメージが定着していました。しかし、最近の研究によって、男性のほうに不妊の原因があったことが明らかになっています。

不妊の原因が男性のほうにあったケースとして、以下の3つがあります。

  1. 精子の数が少ない
  2. 精子の運動率が低い
  3. 精子の奇形率が高い

男性の不妊治療の流れ

男性の不妊治療は、原因に応じて薬物療法や手術が行われます。たとえば、精子の数が少なかったり、精子の運動率が低いことが原因の場合には、漢方薬やビタミン剤、血流改善薬を使った治療が行われます。また、精巣機能の異常により精子が生産されにくかった場合や、精路(精子の通り道)がふさがっている場合には手術が行われます。

こうした治療法を行っても妊娠につながらなかった場合や、夫婦が高齢で妊娠を急いでいる場合は、人工授精を行います。

男性の不妊治療の検査方法

男性の不妊検査は精液検査と前立腺肥大などの泌尿器科分野の検査が主に行われます。
精液検査では、精子を採取して、精子量や運動率、精子の形などを調べます。朝自宅で採取したものを病院に届けて検査を行う病院もありますが、多くは新鮮な精子で検査を行うため、病院の採精室などの個室で採取するのが一般的です。

一方、泌尿器科分野の検査では、精索静脈瘤や前立腺肥大、精巣炎など不妊の原因となりうる病気がないかを検査します。また、EDや射精障害などを評価する検査が行われることもあります。
その他、精液検査で精子の数が少ない場合や射精障害がある場合には、男性ホルモン量の検査や遺伝子検査などを調べることもあります。

男性の不妊症状

代表的な男性の不妊症状として、以下のようなものがあります。

無精子症

男性の精液に精子が見つからないか、精子の運動率が低すぎる症状です。

乏精子症

精子の数が極端に少ない症状です。一般的に、精子の数は1ccあたり6000~8000万以上と言われており、それ以下の数値の場合に乏精子症と診断されます。精子の数によって、軽度(5000万以下)、中等度(1000万以下)、重症度(100万以下)の3つに区別されます。

精子無力症

精子の運動率が低い症状です。動いている精子が半分未満、もしくは活発に前進運動する精子が4分の1未満の場合に、精子無力症と診断されます。

精索静脈瘤

精巣に血液が逆流したために、精巣の静脈がこぶのように腫れてしまった状態です。

勃起不全[ED]

性行為のときに勃起が起こらない、もしくは勃起しても一定期間維持できない状態です。

病院の治療以外でできることはある?

男性の不妊を予防するためのセルフケアとしては、次のようなものがすすめられています。

  • 禁煙
  • 節酒
  • 通気性のよい下着や衣類
  • 適度に射精する
  • 長時間の座位を避ける

喫煙や過度な飲酒は精液の質を悪化させることが知られており、勃起障害を引き起こすことが知られています。
また、精巣は睾丸内にあり、高温多湿の環境下に長時間晒されると造精機能が悪化することがあります。このため、通気性の悪い下着や衣類を避け、長時間座り続けるなどで熱がこもるのを避けるようにしましょう。

さらに、精子は一日に5000万個以上作られますので、新鮮で運動率のよい精子を射精するには適度に射精して新鮮な精液をキープする必要があります。

おわりに:不妊の原因は男性にあることも。夫婦で治療を受けることが大切

不妊は女性だけでなく、男性にも原因がある可能性があります。不妊治療は女性だけが受ければいいと思わず、男性も一緒に受けましょう。そして、もし男性のほうに原因があった場合は、症状に合った治療を受けて妊娠を目指しましょう。

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