糖尿病による緑内障で失明することがあるって本当? 原因や治療法について

2018/8/6

渡辺 先生

記事監修医師

東京都内大学病院眼科勤務医

渡辺 先生

糖尿病には足壊疽による切断など、さまざまなリスクが上がりますが、緑内障による失明もその一つです。以降では糖尿病患者が緑内障になる原因や、失明を防ぐための治療法について解説します。

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糖尿病による緑内障で失明のリスクが

糖尿病による失明の原因としては、三代合併症の一つ「糖尿病網膜症」がよく知られていますが、糖尿病網膜症の進行過程で起こる「血管新生緑内障」という別の眼病も、視力低下や失明を引き起こす可能性があるものです。
緑内障とは、眼球の内側から外側にかかる眼圧の影響で起こるもので、持続すると視神経の出口が圧迫され、神経自体も傷ついて視野が欠けていくようになります。ただし、糖尿病による血管新生緑内障は一般的な緑内障よりも治療が難しく、失明に至ることが多い傾向にあります。

糖尿病だと緑内障になる原因は?

糖尿病になると、高血糖によって血管が傷つくようになるのですが、目の網膜付近には高血糖の影響を受けやすい細小血管が多数存在します。網膜の血管の損傷は、高血糖の状態に応じて徐々に進行していくもので、はじめは血管がもろくなったことで点状出血が起きたり、細小血管にこぶのようなものが見られるようになります。
さらに進行すると網膜の血管が詰まるようになり、酸素不足で血管自体が死滅することで、代わりに虹彩(眼球の色が付いている部分)や毛様体(眼球内の水晶体を囲む筋肉)などに新しい血管(新生血管)が伸びるようになります。
しかし、これらの新生血管は出血しやすいため、破れて血液成分が漏れ出したり、隅角(ぐうかく:目の中を循環する水が出る部分)を塞ぐようになります。このため水分は眼球に留まってしまい、眼圧が上がって緑内障の状態に陥るようになるのです。

糖尿病による緑内障を治療するには?

血管新生緑内障は、点眼薬や内服薬で眼圧を下げられる状態ではないため、手術治療が実施されることがありますが、手術自体が目にとって大きな負担となる上、確実な治療効果が得られるとは限りません。近年では、抗VEGF薬など新生血管の活動を抑制する薬による治療が効果を上げ始めていますが、基本的には失明状態になる前に予防手術を行うことや、レーザー光凝固術で新生血管の生成を抑制することが重要です。

抗VEGF薬

血管新生緑内障の原因である新生血管の発生には、網膜が虚血状態になった時に発生するVEGF(血管内皮細胞増殖因子)が関連していると考えられています。抗VEGF薬はそんなVEGFの働きを抑制する薬で、硝子体に注射する治療法が一般的です。

レーザー光凝固術

血流が途絶えた網膜に向けレーザー光を照射し、網膜を凝固することで、新生血管の発生を防ぐ治療法です。所要時間は1回30分前後です。

おわりに:糖尿病による緑内障は失明の可能性が高い!未然の予防を

糖尿病患者は、高血糖状態によって網膜付近の血管が詰まりやすいため、緑内障のリスクが高いです。さらに、糖尿病による血管新生緑内障は一般的な緑内障よりも失明の可能性が高いため、定期的な眼科検診や早期治療で予防することが大切です。

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