記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性的な耳鳴りを治療するには、どんな方法があるのでしょうか?薬や補聴器、TRTなど、最新の治療法も併せてご紹介します。
耳鳴りは原因によってさまざまな種類があり、すべての耳鳴りに効く薬はないというのが現状です。かつてはリドカインという薬を静脈注射する治療も行われていましたが、7割近い患者が改善する一方、効果が持続しないため、今はほぼ行われていません。
対症療法ではありますが、病院では以下のような薬が処方されます。
耳鳴りだけでなく難聴も伴う場合、補聴器をつけることで耳鳴りが軽減することがあります。
TRTとは耳鳴り順応療法と呼ばれるもので、耳鳴りの原因を治療するのではなく、耳鳴りを意識から遠ざける治療法です。人間の脳は、無意識の間に必要な音だけを意識し、他の音(人との会話中に聞こえる、車が通り過ぎる音など)は意識から排除するようにしています。そして耳鳴りの音は必要な音ではないので、本来は排除されるべきなのですが、慢性的な耳鳴りの人は意識的に耳鳴りを聞くような仕組みができてしまっています。TRTとはこの仕組みを修正する治療で、およそ7割の患者に効果が見られます。
TRTでは、サウンドジェネレーターという補聴器のような機械をつけます。サウンドジェネレーターからは微かな雑音が出続けており、これを毎日装着して聞き続けることで、徐々に耳鳴りを意識しない脳の仕組みを作っていきます。
耳鳴りの最新の治療法としていま注目を集めているのが、ステロイド注射です。中耳腔にステロイド剤を微量注射することで、日常生活で気にならないレベルにまで耳鳴りを軽減させます。半数以上の患者に効果が見られる治療法です。
また、先述のTRTによる治療と自律訓練法(自己暗示をかけて心身の緊張をほぐす方法)を組み合わせるのも、高い効果がある最新の治療法です。「忘れる」という脳の特性を利用し、耳鳴りはしていても気にならないという状態を1年ほど維持することで、ほぼ耳鳴りを意識せず日常生活を送れるようにします。
近年では耳鳴りの発生メカニズムが少しずつ判明し始めたため、TRTやステロイド注射など最新の治療法で改善する患者も増えつつあります。慢性的な耳鳴りでお悩みなら、専門外来で治療についてご相談されることをお勧めします。