記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/24 記事改定日: 2019/2/27
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
片頭痛で用いられる治療薬のひとつにトリプタン系薬剤があります。こちらの記事では、トリプタン系薬剤が頭痛を改善するメカニズムや、トリプタン系薬剤の種類、副作用などについて詳しく解説します。
トリプタン系薬剤とは、「選択的セロトニン受容体(5-hydroxytriptamine:5-HT)作動性薬剤」とも呼ばれている、セロトニンの分泌を正常化することで頭痛を抑える作用を持つ薬です。片頭痛の発作が始まったとき(急性期)の第一選択薬として知られています。
片頭痛が起こる原因には諸説あり、そのうちのひとつにセロトニンの影響が挙げられます。セロトニンとは、他の神経伝達物質をコントロールする作用や血管収縮作用を持つ、脳内に存在する神経伝達物質の一種(神経ペプチド)です。一説には、片頭痛は、セロトニンの作用によって血管が収縮した後に再び拡張することで起こるとされています。トリプタン系薬剤はセロトニンに働きかけ、拡張した血管を収縮させることで頭痛を改善します。
また片頭痛は三叉神経が刺激されることによって起こるとも考えられており、トリプタン系薬剤には、この三叉神経に作用して頭痛を抑える効果もあります。三叉神経から脳への刺激の伝達を防ぐ働きもあるため、痛みに伴って起こる吐き気や嘔吐などの症状も抑えることが可能です。
ただ、トリプタン系薬剤では頭痛の予防はできません。あくまでも頭痛が発生したときに服用する薬であるため、予防のためには他の薬が必要になります。
片頭痛発作が月に2回以上あり、日常生活に支障を及ぼしているような場合には、発作の予防薬を使用することが推奨されています。
予防薬には、β遮断薬やカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬などのように血管を広げる作用のある薬や抗てんかん薬、抗うつ薬が使用されます。
効果は人によって異なりますが、服用を続けることで、発作の頻度や重症度などを軽減し、万が一頭痛発作が生じた場合でも治療薬の反応をよくすることがわかっています。
現在日本では、以下5種類のトリプタン系薬剤を使用することができます。
商品名は「イミグラン®︎」です。速効性のある注射薬、注射薬の次に速効性がある点鼻薬、錠剤の3種類が販売されています。注射薬は10分、点鼻薬は15分と投与してから効果が現れるまでの時間が短く、持続性もあることが特徴です。
商品名は「ゾーミッグ®」です。錠剤と口腔内速溶錠の2種類が販売されています。口腔内速溶錠は口の中で溶けるため、水がなくても飲めるという利点がありますが、効果が現れる時間は錠剤と変わりません。
商品名は「レルパックス®」で、錠剤のみの販売です。作用時間が長く、服用した日に再発が起こりにくいといわれています。
商品名は「マクサルト®」です。錠剤と口腔内崩壊錠が販売されています。服用後に速やかに吸収され、効果が現れます。
商品名は「アマージ®」で、錠剤のみの販売です。半減期が約5時間と長く、持続性の片頭痛への効果が期待できます。
トリプタン系薬剤の副作用としては、「トリプタン感覚」と称される胸部症候群が現れることがあります。以下はトリプタン感覚が起こった際に首元や胸、のど、肩などに見られる症状です。
症状は服用後30分以内に生じ、放っておいても消失することがほとんどです。どのトリプタン系薬剤であってもこうした副作用が報告されています。
このほか、以下のような副作用も認められています。
吐き気や嘔吐の症状が強い場合には、吐き気止めの薬を併用することがあります。
ただし、トリプタン系薬剤には基本的には重篤な副作用は見られず、使用する薬剤をほかの種類に変更することで改善するケースが多くを占めています。副作用がひどい場合には我慢せずに医師に相談することが大切です。
トリプタン系薬剤を頻繁に飲み過ぎることによって「薬剤乱用頭痛」が起こることもあります。月に10日以上の服用を、3ヶ月よりも長く継続するとトリプタン乱用頭痛と診断されます。
薬物乱用頭痛とは、薬物を過剰に摂取することによって発生する頭痛のことです。
頭痛原因の中で3番目に多く、原因となる薬物は市販の消炎鎮痛剤やエルゴタミン製剤、トリプタン製剤が多いとされています。
とくに市販薬は気軽に手に入ることから、身体のどこかが少しでも痛むと服用する人もおり、このような乱用が発症の引き金になります。明確な発症メカニズムは解明されていませんが、薬物の過剰服用によって痛みに対する感受性が高くなり、少々の刺激で痛みを感じやすくなることが原因と考えられています。
頭痛薬を服用しても症状が改善しない場合には、自己判断で漫然と服用を続けず、医師に相談するようにしましょう。
トリプタン系薬剤は片頭痛を改善する効果が認められており、片頭痛に悩む人の強い味方と言えるでしょう。ただし、トリプタン系薬剤には胸まわりの圧迫感や吐き気、嘔吐、眠気といった副作用も認められています。多くのケースでは薬剤を変更することでこうした副作用は軽減するため、副作用が現れた場合は速やかに医師に相談しましょう。