自閉症とアスペルガー症候群の違いは?

2018/5/9 記事改定日: 2019/2/17
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

自閉症とアスペルガー症候群は、いずれも比較的知名度の高い発達障害ですが、両者にはどういう違いがあるのでしょうか?また、遺伝する可能性もあるのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

自閉症とアスペルガー症候群の違いは?

脳の発達が生まれつきアンバランスであったり、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりがミスマッチだったりして、社会生活に困難が発生する障害を発達障害と呼びます。

そして、この発達障害のなかでも知名度が高いのは自閉症とアスペルガー症候群です。どちらも似た症状があるのですが、ふたつの違いは言語と知能に遅れがあるかどうかといわれています。

自閉症の場合、言語に遅れがあらわれるケースが多く、知的障害を伴うことも珍しくありません。対してアスペルガー症候群は言語の発達が遅れることはなく、知的障害がみられることもないようです。

もうひとつの大きな違いとしては動作性知能と呼ばれる、直感や感性、想像する力の違いだといわれています。自閉症の場合、言語性知能といった、考えたり言語を理解したりする力よりも動作性知能のほうが高いのですが、アスペルガー症候群では逆に動作性知能よりも言語性知能が高いというのが特徴です。

他にも学習障害の違いがみられることもあり、アスペルガー症候群の人は学業などで優秀な成績であるケースが多いのですが、その半面で注意力や柔軟性に欠けており、十分に能力を発揮できないということもあるそうです。
一方自閉症の場合は、学習障害を伴うことが一般的なため、読み書きや足し算、引き算などの計算が苦手な傾向があります。

自閉症やアスペルガー症候群は遺伝する?

発達障害の原因は長い間、子育ての仕方だと言われてきました。ですが近年の研究によって、遺伝子と環境のふたつの要素が複雑に関係しているものだということがわかっています。

といっても研究のひとつひとつが絶対に正しいと証明されているわけではなく、遺伝子が主な要因だとしてもどの遺伝子がどのように関連して症状を引き起こしているのか、親からの遺伝がどの程度の確率で起こるのかなどは明らかになっていません。

また、遺伝子と環境が関係しているものの、その環境要因が何なのかわからないことも圧倒的に多いので、あくまでも数百人に対する調査をもとに、確からしいと導き出された説だと理解しておく必要があります。

自閉症やアスペルガー症候群の診断は受けたほうがいい?

ここまでを読んで、自分自身や身近な人が「自閉症やアスペルガー症候群なのでは?」と思うこともあると思います。実際、なんとなく違和感があっても判断に困ったり受診を躊躇してしまったりする人も少なくありません。

しかし適切なサポートを受けられないまま日常生活を送っていると、最も困るのは本人です。少しでも早く気づいてフォローしたり、生活しやすい環境を整えてあげたりすることが必要になってきます。

とくに自閉症は小さいころからその人に合ったフォロー方法を知っておくと、才能を最大限に発揮できるほか、本人や家族のストレスを大幅に軽減させることができるともいわれています。まずは無料で相談できる相談窓口を利用し、その後必要であれば医療機関での診断を受けましょう。

子供と大人では無料の相談窓口が少し違いますので、以下を参考にしてください。

子供の場合

  • 保健センター
  • 子育て支援センター
  • 児童発達支援事業所 など

大人の場合

  • 発達障害者支援センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 相談支援事業所 など

高次脳機能障害と発達障害

高次脳機能障害とは、脳卒中や脳腫瘍、脳炎などの脳の病気や頭部外傷などによって脳へのダメージが加わることで、様々な脳機能が低下する病気です。
症状の現れ方は人によって異なりますが、判断力の低下や人格の変化、記憶障害など認知機能と情動に障害が見られるようになります。

麻痺などの身体症状を伴わないことも多いため、「病気や事故から回復した後に人が変わったようだ」と思われることも少なくありません。
高次脳機能障害では、情動の障害によって対人関係に支障を来たしたり、言語能力が低下するなど自閉症やアスペルガー症候群と似たような症状が現れることがあります。症状は似ていても対処法は全く異なりますので、気になる症状がある場合は病院を受診して検査してもらうようにしましょう。

おわりに:発達障害かも?と思ったら早めに診断を

文部科学省の2012年の調査によると、通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子供がおよそ15人に1人の割合でいることがわかっています。疑わしいと感じたら自己判断はせず、ひとりで抱え込まないで周囲に相談してみると良いでしょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

診断(68) 遺伝(47) アスペルガー症候群(11) 違い(36) 自閉症(18)