記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2017/3/22 記事改定日: 2019/8/27
記事改定回数:4回
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
妊娠すると、女性の体は赤ちゃんを産み育てるためにさまざまな変化が起こります。この記事では、出産前と出産後で女性の胸がどんなふうに変わるのかについて解説します。
妊娠中に胸が大きくなってくると、胸に痛みが出てくることがあります。この胸の痛みは、妊娠中の最も一般的な症状のひとつで、通常、妊娠4週目から7週目頃に始まり、妊娠初期を過ぎるとなくなる場合がほとんどです。
胸が痛くなるのは、ホルモンバランスが急激に変化して、乳房内で乳腺が発達するためです。こうした変化は、出産後に母乳を作るために必要なもので、決して悪い病気の兆候ではありません。もし痛みが強くて不安なときは、かかりつけの医師に相談しましょう。
乳首が妊娠前より突き出ることがあります。また、乳輪(乳首の周りの色の濃い部分)の色が濃く、大きくなったり、斑点ができたり、皮脂を分泌するモントゴメリー腺(乳輪にある皮脂腺)ができやすくなります。この変化は数カ月ぐらい続きます。
皮膚の真下にある青い血管(静脈)が浮き出てきます。この青い血管(静脈)は、母親から赤ちゃんに栄養素と体液を運ぶ役割をになっています。
胸の痛みを和らげるには、ある程度胸が大きくなったり、張ってきたりしたときにマタニティブラに変えるのがおすすめです。また、きつく抱きしめられることがないよう、パートナーにも状況を説明して理解を得ることも大切です。
出産後、女性の体は赤ちゃんのために母乳を作り始めます。最初のうちは、乳房内の血流がスムーズではないことが多く、胸の張りが出やすくなります。また、母乳は分泌されているものの、赤ちゃんにうまく飲ませてあげることができず停滞してしまうこともあります。
授乳中の胸の張りを解消する方法として、以下のような方法があります。
ただし、自分で母乳をしぼるときは注意が必要です。というのも、張りがつらいからといって全部しぼりだそうとしてしまうと、体はしぼった分も赤ちゃんに必要と勘違いしてたくさん母乳を作り出そうとするからです。
また、赤ちゃんが卒乳したら、痛みを最小限に抑えるとともに、母乳が作られるのを抑えるために、以下のようなことを行いましょう。
授乳中の場合、乳腺炎で胸が痛くなることがあります。乳腺炎を発症すると、胸のある部位が赤く腫れて熱をもち、痛くなります。悪化すると、発熱や倦怠感などの全身症状もあらわれます。
乳腺炎には、母乳がうまく出ずに溜まってしまったうっ滞性乳腺炎と、細菌が感染してしまう化膿性乳腺炎があります。化膿性乳腺炎の場合は抗生物質による治療や、場合によっては切開が必要となります。早めにかかりつけの医療機関を受診しましょう。
出産後の変化として、胸が垂れたり、胸のサイズが小さくなったりすることも挙げられます。出産前に大きくなった胸は、産後1年ぐらいかけて少しずつ元の大きさに戻ります。このとき、一度伸びた皮膚や胸を支えるクーパー靭帯は伸びたままになってしまうので、胸の形は崩れます。
出産後の胸の変化を最小限に抑えるためには、体型に合うブラジャーを着けることが大切です。また、胸まわりの筋肉を鍛えるトレーニングを取り入れるのもおすすめです。たとえば、前かがみの状態で、ダンベルや水が入ったペットボトルを上げたり下ろしたりする体操は、日常生活の中で取り入れやすいと思います。
胸の変化は、赤ちゃんを育てるために必要ではあるものの、実際に変わった様子を見ると悲しい気持ちになるかもしれません。運動や下着である程度変化を抑えることができますので、できるところから取り入れていきましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。