記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/23
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
宗教上の理由や、「カラダの調子がよくなる」といった理由でベジタリアン(菜食主義者)として生きる人たちがいます。ベジタリアンの人々の中には「栄養バランスが心配・・・サプリをとったほうがいいの?」「妊娠中もこの食事を続けて大丈夫?」などなどギモンを持つ人もいるのではないでしょうか。
これから3回にわたって、そんなギモンにお答えしていきます。
今回の記事でとりあげるのは、そもそものベジタリアンの定義から、ベジタリアンの妊婦さんやママからよく聞かれる質問についてです!
ベジタリアン(菜食主義者)は、穀物、豆類、ナッツ、種子、果実、野菜、酪農製品、卵からなる食事をとります。赤肉、鶏肉、猟鳥、魚、甲殻類(カニやロブスター)、そしていかなる動物性食品(ゼラチン等)も摂食しません。
ベジタリアンにはさまざまなタイプがあり、食事のルールも細かく異なります。
・乳卵菜食主義
酪農製品と卵の両方が摂取されます。これが最も一般的な菜食主義の食事です。
・乳菜食主義
酪農製品は摂取しますが、卵を食べません。
・卵菜食主義
卵を取りますが、酪農製品を摂取しません。
・完全菜食主義
酪農製品、卵のいずれも摂取しない上、ほかのいかなる動物性食品もとりません。
必要な栄養素を全て摂取できているのであれば、基本的に子どもでも菜食主義・完全菜食主義の食事でも健康的に成長できます。
ただ、子どもは成長にあたって大量のエネルギーとタンパク質を必要とするため、ベジタリアンの食事をさせる場合は、十分な量の鉄分・カルシウム・ビタミンB12・ビタミンDを摂取させることが大切です。
肉や魚を抜いた食事をとらせている、あるいはまったく動物性食品を与えていないという場合はタンパク質が不足しているため、卵、牛乳・チーズ等の酪農製品、大豆製食品、豆類、ナッツ、種子などを与える必要があります(5歳未満の子どもにナッツをそのまま与えるとのどに詰まらせる恐れがあるので、すりつぶす、ナッツバターを用いるなどの工夫が必要です)。
また実際、完全菜食主義の食事は量が多く繊維豊富なため、十分なカロリーや栄養素を摂取する前に満腹感を覚えてしまう可能性があります。そのためサプリメントを利用するのも有効でしょう。
1歳未満で授乳中の乳児の場合は、一日8.5-10mcgのビタミンDを含有するサプリメントを与えてビタミンDの不足を防ぐ必要があります。
ただし、乳児用調整粉乳を取っている乳児は、調整粉乳摂取量が500mlを下回っていない限りサプリメントを与えてはいけません。すでに調整粉乳にビタミンDが含まれているからです。
なお、授乳中の母親もビタミンB12を余計に摂取しておく必要があります。
生後6ヵ月から5歳まではビタミンA・ビタミンCを含有するビタミンサプリメントの摂取が推奨されます(一日500ml以上の調整粉乳を摂取している場合を除く)。これより上の年齢の子どもの場合は、サプリメントの摂取について医師と相談してください。
種類が豊富でバランスのいい食事がとれているのであれば、菜食主義・完全菜食主義でも妊婦も胎児も十分な栄養素を得ることができます。しかし、十分な量の鉄分・ビタミンD・ビタミンB12を確保するのは難しいかもしれません。
妊娠中や授乳中の人を含む全ての成人女性は、一日10mcgのビタミンDを含有するサプリメントを摂取することが推奨されています(特に冬季)。また、妊娠中の女性は葉酸サプリを妊娠12週目まで取り続けることがおすすめです。
妊娠中の女性も子どもも、ベジタリアンだと場合によっては特定の栄養素が不足してしまうことがあります。今回の記事ではサプリメントの摂取をおすすめしていますが、摂取する前にまず一度お医者さんに相談してみてくださいね。