下痢が病気のサインになってることがあるの?

2018/6/12

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

下痢は非常に身近に起こる症状であり、基本的には安静を保ってこまめに水分補給をしていれば自然に治っていきます。ただし、症状が強いものや長く続くものには何らかの病気が隠れていることがあるので注意が必要です。
この記事では、下痢に隠れている可能性がある病気について解説しています。よくある症状だからこそ、見落としてしまいがちなので、この機会に正しい知識を身につけましょう。

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下痢のほかに熱や嘔吐を伴う病気は?

便に含まれる水分量が多く、液状に近いまま排出されるものを下痢と呼びますが、一般には食べたものが十分に消化されなかった場合や、冷えや食あたりが原因で引き起こされ、便の形状が変化するとともに便の回数も増えます。

この下痢の症状だけでなく、熱や嘔吐を伴う病気には感染性胃腸炎があげられます。
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルス、寄生虫などが原因で下痢を引き起こし

  • 発熱
  • 下痢
  • 腹痛
  • 悪心
  • 嘔吐

など、胃腸炎の症状があらわれる病気です。

多くの場合、食品や水を介して感染すると考えられていますが、一部ペットや人からの感染の可能性もあります。
潜伏期間は病原体にもよって異なりますが、1~3日で症状があらわれるでしょう。
吐き気や嘔吐症状の強いことが特徴で、発熱はあっても38度以下であることが多いです。
特別な治療方法はなく、症状に応じて対症療法がおこなわれます。

対処法

小児や高齢者では下痢による脱水症状が心配されるので、こまめに水分をとることが大切です。
また、高齢者は嘔吐物を誤嚥することで肺炎を引き起こすことが心配されますので、体調の変化に注意する必要があります。
症状がひどくて水分も取れない場合には医療機関を受診しましょう。

安静にして、回復してきたら消化しやすい食事をとるようにしてください。
感染を予防するためには、調理や食事の前、トイレの後に石けんで十分に手洗いをします。
便や嘔吐物を処理するときには使い捨て手袋、マスク、エプロンをして、塩素系の消毒剤や家庭用漂白剤などで消毒しましょう。

下痢が続くと病気の可能性があるって本当?

感染性胃腸炎のように明らかな原因がないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感を伴って、便秘や下痢が長く続く病気のひとつに、過敏性腸症候群があります。
過敏性腸症候群は、大腸に腫瘍や炎症などの病気がないことが前提で、長期間にわたってお腹の調子が悪いときに最も考えられる病気です。
日本を含む先進国に多く見られる病気で、消化器科を受診する人の3分の1を占めるとされ、20~40代が多く、男性よりも女性のほうがやや多く見られるといわれています。

過敏性腸症候群になる原因は分かっていませんが、細菌やウイルスによる感染性胃腸炎にかかった場合、回復後になりやすいことが知られています。
また、ストレスによって不安な状態になると、腸の収縮運動が激しくなって痛みを感じやすくなるのですが、過敏性腸症候群の人はこの状態が強いという特徴があるといわれています。

長く続く下痢の全てが過敏性腸症候群というわけではありませんが、疑わしい場合は早期に治療を始めるためにも早めに病院で検査してもらいましょう。

過敏性腸症候群の検査・診断

過敏性腸症候群の診断では、まず自覚症状のパターンから病気を疑います。
最近3ヵ月の間に、月に3日以上お腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、排便によって症状がやわらいだり、症状とともに排便の回数が変わったり、便の状態が変わったりしている場合は過敏性腸症候群である可能性が高いです。

診断を確定させるため、大腸がんなどの悪性疾患や炎症性腸疾患などがないかを調べることもあり、家族にそうした既往歴のある人がいる場合は大腸内視鏡検査や大腸造影検査をおこないます。
治療においては生活習慣や食事指導、薬物療法や心身医学的治療の3つが基本となりますが、症状の完全な消失にこだわらず、日常生活のなかで病気とうまく付き合っていくことが大切です。

おわりに:下痢による病気のサインを見逃さない

感染性胃腸炎のように、周りに移してしまう可能性のある病気の下痢は、感染を広げないためにもすぐに気づく必要があります。
一方、長期にわたって胃腸の不快感がある過敏性腸症候群は、放っておくと日常生活に支障をきたすことが考えられます。
気になる症状が出ている場合には、はやめに病院を受診しましょう。

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