症状として肛門からの出血や痛みがよく知られている「痔」ですが、かゆみが起こることはあるのでしょうか?また、痔以外の症状でかゆみがある場合はどのような原因が考えられるのでしょうか?
ここでは、肛門のかゆみの原因や治療法について解説していきます。
痔のかゆみを治すには?
痔に伴うかゆみの主な治療法には以下の3つがあります。
- 便通を改善する
- ステロイド外用剤漸減療法
- 正しいおしりの手入れ
このうち、痔のかゆみの原因は、肛門内に残った便の刺激からくることが多いとされているので、まずは原因となる便秘などの便通を改善することが大切です。便通を改善せずに薬を使用しても、かゆみは治まらないことが多いといわれています。
どうしてもかゆみが治まらないというときは、以下の薬でかゆみを軽減できる場合があります。
ステロイド外用剤漸減療法
かゆみに伴い湿疹がある場合は、ステロイド外用剤が有効な場合があります。
- 薬の強さ
- 湿疹の症状の程度により、ステロイドの強さや使用期間が異なります。特に肛門周辺の皮膚は薄いため、慎重に薬を使う必要があります。
- 使用期間
- 長期間使用を続けると、副作用が起こる恐れがあるため、2~3週間を限度として使用します。
- 薬の使用を辞める場合
- ステロイドは突然使用を中止すると、症状が悪化する危険性があるため、湿疹が治まってからも少しずつ薬の量を減らしていく方法がとられます。
また、ステロイドを辞めた後も、皮膚のバリア機能が元に戻るまで1ヶ月程度はかかるため、その間は保湿剤を塗り、保護する必要があります。
正しいおしりの手入れ
間違ったおしりのケアも、かゆみの原因になります。以下の点に気をつけましょう。
- 過度な洗浄は避ける
- 患部の洗浄は、水で洗い流すだけで十分なので、温水便座や入浴時の石鹸の使用なども必要ありません。また、おしりにシャワーを強くあてたり、手でこすって洗わないようにしましょう。
- 3回以上拭かない
- おしりを拭く際は、紙を丸めて優しく押さえるように拭きましょう。また、3回以上拭いても便が紙に残る場合は、坐薬などを使い、出残り便を出し切りましょう。
- おしりふきやウエットティッシュなどは使わない
- 市販のおしりふき、ウエットティッシュ、洗浄綿、肛門専用のスプレー剤などの使用でかぶれたり、かゆみを悪化させることも多いので、使わないようにしましょう。
- 消毒しない
- マキロンやオキシドール、アルコール消毒などを使用することで、患部がかぶれることも多くあります。消毒をすると、皮膚バリアを形成する体に必要な菌までも殺してしまい、症状が悪化する恐れがあるので、消毒はしないようにしましょう。
肛門のかゆみは痔のせいとは限らない?
おしりのかゆみは肛門掻痒症の可能性も?
肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)とは、外側から肛門を傷つけられることで発症する病気です。
初期の頃は入浴後や就寝前にかゆみが起こることが多く、しだいに毎日頻繁にかゆみを感じるようになったり、肛門の軽いかゆみが月に1~2回ほど起こることもあります。症状が悪化すると、就寝中に無意識に掻くようになったり、ほぼ1日中かゆみを感じるようになることもあります。
原因
- トイレットペーパーで拭きすぎることにより、肛門の皮膚に傷が付いている
- 入浴時に強く洗いすぎることにより、肛門の皮膚に傷が付いている
- 切れ痔やいぼ痔による肛門の傷や、硬い便や下痢による小さな傷が肛門のかゆみを発生させている
- 脱肛により肛門の外側に超粘膜が脱出した際に、肛門の分泌液が付着し、かぶれや湿疹、炎症などを起こした
- アレルギー体質により、肛門や性器周辺の皮膚・粘膜にかゆみが発生した
- 慢性疾患(糖尿病、肝臓病、腎臓病など)による体の解毒作用低下により、血液や体液の汚れに体が反応し、肛門にかゆみが生じる
- ストレスにより、肛門や皮膚全体にかゆみを生じさせている
治療
治療中は、以下のことを注意しましょう。
- 便秘の治療
- 便が肛門内に溜まったり、残ったりしないように、便通を良くすることが大切です。食生活の見直しや適度な運動をすることで、便秘を改善しましょう。
- 塗り薬での治療
- 重症の場合は、ステロイド外用薬を使用することがあります。ステロイド外用薬は、医師の指定した用法・用量を守って使用すれば、副作用が起こる可能性は低いといわれています。
ステロイドは急に使用をやめると症状が悪化する恐れがあるので、徐々に濃度を落としながら用量を減らしていく必要があり、かゆみの症状が治まっても治ったとは限らないので、自己判断で使用を中断したり用量を増やしたりしないようにしましょう。
- 正しく肛門の手入れをする
-
- 薬を塗っていても、患部を掻いている限り症状は改善しないので、患部を掻かないことが大切です。また、排便後にトイレットペーパーで強く拭くこともやめましょう。軽く押さえる程度で十分です。
- 温水便座はなるべく使用しないようにしましょう。どうしても使用したい場合は、水圧と水温を一番低い設定にし、5秒以内で終わらせるようにしてください。
- 皮膚は乾燥することでかゆみを感じる神経が増殖するため、なるべく患部を乾燥させないようにしましょう。
- 石鹸、消毒液、肛門のスプレー、ウエットティッシュなどは絶対に使用しないようにしましょう。また、入浴時に石鹸のついたタオルで患部をこすり洗いするのも控えましょう。洗浄後は石鹸をよく洗い流してください。
おわりに:おしりのかゆみが続いているなら肛門科へ
痔のかゆみの原因は便の刺激からくることが多いので、まずは便通を改善することが大切です。ただ、痔以外にも肛門掻痒症が原因でかゆみが起きている可能性もあるので、おしりのかゆみが続いているのなら、まずは肛門科で診察を受けるようにしましょう。
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