脳梗塞の治療ではどんなことをするの?手術が必要な場合は?

2018/6/26

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

脳梗塞の治療ではどのようなことが行われるのでしょうか?また、手術する必要はあるのでしょうか?脳梗塞の治療方法や手術について解説していきます。

脳梗塞の治療で点滴する期間はどのくらい?

外科手術以外で主に点滴による薬剤投与を基本に行う治療を保存的治療といいます。脳梗塞の治療では主に点滴治療を行うことが多く、血液をサラサラにする薬や血栓を防ぐ薬、脳の腫れを抑える薬、脳を保護する薬などが使用されます。点滴を使用する期間は1~2週間ほどで、内服薬は再発予防として用いられます。

脳梗塞の治療法のひとつ、t-PA治療法とは

脳梗塞とは、脳の様々な動脈が詰まることにより脳に酸素や栄養素が行き渡らなくなる病気です。動脈が詰まった状態で時間が経過すると、脳細胞が最終的には壊死(細胞が死滅する)に至ります。また、時間が経つにつれて血流が低下すると、壊死の範囲が拡大していきます。

血栓溶解療法(t-PA治療法)では、脳細胞が壊死する前に、動脈を詰まらせている血栓を溶かすことで、血流を再開させる治療法です。動脈が詰まってからなるべく早く血流を回復させることで、症状の悪化を防ぐことができます。ただし、血栓溶解薬を使用することで壊死巣が出血を起こす可能性もあるので(出血性梗塞)、治療する際には注意が必要となります。

t-PAとは

体内にもとから存在するプラスミンという酵素は、前駆体であるプラスミノゲンから作られ、血栓を溶解する働きがあります。t-PA(tissue-plasminogen activator:組織プラスミノゲン活性化因子)は、その血栓を溶解する作用のあるプラスミノゲンを増強させることにより、血栓を溶かす酵素です。t-PA製剤は、遺伝子組み換えにより作られた血栓溶解療法に適した薬となります。

t-PAの投与方法

t-PAの投与量は、体重により総量が決められます。まず最初に、総量の10%を静脈注射で急速投与し、約1時間かけて残りの量を投与します。投与を開始してから24時間は出血のリスクが高くなるので、厳重な経過観察を必要とします。その後36時間は病棟などで経過観察を継続します。

t-PA治療の効果

効果が得られる場合
t-PA治療の効果は、脳梗塞の発症後すぐに行うことが重要だとされています。早急に血栓を溶かすことができると、後遺症を残すことなく症状の改善が期待できます。
効果が得られない場合
脳梗塞の発症からt-PAの投与が遅れた場合は、脳出血を起こす可能性が高くなります。そのため、発症から時間が経過している場合はt-PAの投与は行いません。また、脳梗塞の範囲が拡大していたり、太い動脈の詰まりが起きている場合も、脳出血のリスクが高くなるとされています。
t-PA治療の安全性と有効性
t-PAの安全性と有効性について行われた全国調査によると、t-PA治療を行った3ヶ月後に身の回りのことを自分で行えるようになった人の割合が33.1%でした。つまり、t-PA治療を行った3人に1人は、症状に改善が見られたということになります。

t-PA治療が受けられない人もいるの?

以下のような場合は、t-PA治療が受けられない場合があります。

脳梗塞発症から4.5時間以上経過している場合

t-PA治療は、脳梗塞発症から4.5時間以内に行うことが必要とされているため、それ以上時間が経過している場合は投与できないことがあります。意識消失や症状が起きた時間が不明の場合は、最後に確認できた正常時の時間が最終確認時間となります。

また、脳梗塞の発症時間がわかる場合は、その他の条件に合うかどうかを確認する検査を行うので、発症から2時間以内に病院に到着していることが望ましいです。そのため、脳卒中が起きた時は、すぐに救急車を呼び病院に搬送してもらいましょう。

症状が軽い場合

t-PA治療薬は、副作用のリスクが高いため、症状に改善が見られる人や症状が比較的軽い人への投与は行われないことがあります。t-PAは、適正治療指針で定められている状態(禁忌)の場合には使用されないのです。

このほかにも頭蓋内出血を起こしたことがある人、手術を受けて間もない人、出血しやすい状態の人などは、副作用を起こすリスクが高いので投与を行いません。

慎重投与の場合

副作用のリスクが高く、症状の改善もあまり見込まれない場合の投与は「慎重投与」とされています。投与に関するリスクや利点を患者やご家族と相談した上で、慎重に判断します。

脳梗塞の治療で手術する場合

脳梗塞は薬物療法で治療を進めていくのが一般的ですが、検査の結果次第では再発予防を目的に下記のような手術が検討されることがあります。

頭蓋内外血行再建術

動脈硬化により、脳に血液を送る内頸動脈や中大脳動脈の狭窄や閉塞が生じると、半身麻酔や言語障害などの後遺症が残る恐れがあります。ただし、内頸動脈や中大脳動脈の狭窄や閉塞が生じても、後遺症が残らず早急に回復が見られる場合(一過性脳虚血発作)や、軽度の脳梗塞で治まる場合があります。その場合、脳梗塞の再発による重度の後遺症を防ぐために、予防的手術が勧められることがあります。脳血流検査を行った後に、血管吻合術による再発防止策の検討をします。

頸部頸動脈再建術

脳に血液を送る頸動脈が狭窄や閉塞を起こすと、脳梗塞が発生します。脳梗塞が軽症で済んだ場合や一時的な麻酔により回復した場合、また無症状の場合でも、再発する可能性があるため、予防策として狭窄部位の手術が勧められる場合があります。

頸動脈内膜剥離術は、狭窄部の肥厚した内膜を剥離し、脳の血流を再開する手術です。手術前後に脳血流SPECT検査を行うことで、病態の把握や合併症の有無を調べます。また、血管内治療を検討する場合もあります。

おわりに:自分の症状に合わせた治療を受けましょう

脳梗塞の治療では、保存的治療やt-PA製剤を使用した血栓溶解療法が行われますが、t-PA治療薬は副作用のリスクが高いため、症状に改善が見られる人や症状が比較的軽い人への投与は行われないことがあります。また、状態によっては脳梗塞の再発による重度の後遺症を防ぐために、頭蓋内外血行再建術や頸部頸動脈再建術などの手術が勧められる場合もあるので、医師と相談しながら最適な治療を受けるようにしましょう。

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