人間の脳に寄生する寄生虫の種類と症状とは?予防方法はある?

2018/6/15 記事改定日: 2019/4/9
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

寄生虫には、人間の脳に寄生するものが数多く存在します。今回はそんな脳に入り込む寄生虫の種類や、寄生した場合に現れる症状、予防法についてお伝えします。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

人間の脳に入る寄生虫:有鉤囊虫(ゆうこうのうちゅう≒有鉤条虫)

有鉤嚢虫はサナダムシの一種である有鉤条虫の幼虫で、豚に寄生しているものです。豚肉の加熱が不十分なまま食べると、人間の腸の中で成虫となり、卵が糞便と一緒に排出されます。そして、この卵に汚染された食べ物や水分を摂取することで人間も感染し、体内で卵がかえって有鉤囊虫となります。

寄生されたときの症状

この有鉤囊虫は体のさまざまな場所に寄生します。脳にも寄生する可能性があり、脳に寄生すると意識障害や失明、痙攣などを引き起こし、最悪の場合死ぬこともあります。

予防法

有鈎条虫は、生焼けの豚肉などを介して感染することが多いため、豚肉はしっかり加熱して食べるようにしましょう。また、冷凍保存することで死滅させることもできます。大まかな目安としては家庭用冷蔵庫の冷凍室に3日ほど入れておくとよいと考えられていますので、調理前に冷凍処理しておくとなお安心です。
また、衛生状態の分からない湧水や井戸水、海外旅行先での生水は飲まないようにしましょう。その他、有機栽培の野菜などにも堆肥に含まれる有鈎条虫が付着している可能性がありますので、しっかり水洗いしてから食べることも大切です。

人間の脳に入る寄生虫:エキノコックス

寄生虫の一種で、犬やキツネなどの糞に卵が含まれていることがあり、この卵で汚染された食べ物や水分を摂取することで、人間にも寄生します。

寄生されたときの症状

寄生してから数年間は特に自覚症状はありませんが、その間も肝臓などの臓器は食べられ続けており、肝機能障害や腹痛、肝腫大などを引き起こします。
脳に転移することもあり、その場合は意識障害や痙攣などの症状が起きるようになります。

予防法

エキノコックスはキツネやイヌなどの野生動物の糞などを介して感染することがあります。このため、むやみに野生動物に触れないようにし、動物園やペットであっても動物に触れたあとはしっかり手を荒いようにしましょう。

また、川の水や山菜などにも動物の糞が付着している可能性がありますので、むやみに摂取しないようにしてください。

人間の脳に入る寄生虫:肺吸虫症(ウエステルマン肺吸虫症)

淡水産のカニが主な感染源で、加熱不十分な状態でカニを食べると感染・寄生することがあります。アジア地域や南米地域、アフリカ地域に主に分布する寄生虫です。

寄生されたときの症状

主に肺に寄生し、咳や血痰をもたらしますが、脳に寄生した場合は頭痛や嘔吐、運動障害などを引き起こします。

予防法

肺吸虫はサワガニなど淡水のカニに寄生していることが多いため、自分で捕獲した淡水のカニは生食せず、中までしっかり火を通してから口にするようにしましょう。
また、カニに触れたまな板や包丁などを介して他の食材が肺吸虫に汚染されることもありますので、カニに触れた調理器具は十分に洗浄し、熱湯消毒をするようにしましょう。

人間の脳に入る寄生虫:広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅうしょう)

広東住血線虫の成虫は、ドブネズミやクマネズミなどの肺動脈に寄生する、体長22mmほどの線虫です。肺動脈にある卵が肺の毛細血管内で孵化して幼虫になり、肺胞から気管や胃腸を経て糞と一緒に排出されます。その後、この幼虫が中間宿主に取り込まれると、体内で成長して感染幼虫となります。

人間が広東住血線虫に寄生されるのは、感染幼虫を保有する中間宿主を食べたときです。日本での中間宿主としては、港湾などのマイマイやナメクジ、ネズミなどが報告されています。なお、世界的に主に分布しているのは、東南アジアや太平洋諸島です。

寄生されたときの症状

広東住血線虫の幼虫は人間の口から侵入し、血液やリンパ液を通じて脳や脊髄などに集まっていきます。そして脳に入り込むと、好酸球性髄膜脳炎を引き起こすようになります。

好酸球性髄膜脳炎とは、白血球の一種である好酸球の増加を伴う髄膜炎と脳炎で、激しい頭痛や発熱、手足や顔面の麻痺、痙攣、昏睡状態などの症状が現れます。これらの症状は、幼虫が入り込んでから2週間ほどの潜伏期間を経て、出現するようになります。

予防法

日本では感染の機会はほとんどありませんが、中間宿主が付着した可能性のある野菜などはしっかり洗ってから食べるようにしましょう。
また、海外旅行の際にはサラダなど野菜を生食するメニューは避け、しっかり火の通ったものを食べるなどの対策も必要です。

おわりに:生食や海外旅行中は、寄生虫に感染するリスクが高い。細心の注意を

人間の脳に寄生すると激しい頭痛や意識障害を引き起こしたり、最悪の場合は命を落とすこともある寄生虫。基本的にこれらの寄生虫は、加熱不十分な肉や魚介類を食べたり、海外旅行の際に感染するリスクが高まります。調理時や旅行中は細心の注意を払うようにしましょう。

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