記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/23 記事改定日: 2018/8/8
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
牛乳を飲んだらお腹がゴロゴロしたり、唇が赤く腫れたりすること、ありませんか?このような症状は、牛乳や乳製品が原因のアレルギーである可能性があります。ここでは、牛乳や乳製品が引き起こすアレルギー症状についてご紹介します。
IgE依存性牛乳アレルギーは、通常、牛乳を飲んでから数分以内に症状が出てきます。その症状は軽いことが多いですが、重度のアレルギー反応を引き起こすこともあります。
症状としては、発疹(じんましん)、唇の腫れ、下痢、嘔吐、胃けいれん、呼吸困難などがあります。ただ症状が重い場合、牛乳アレルギーがアナフィラキシーショックを引き起こすことがあります。アナフィラキシーショックとは、発症すると短時間のうちに全身にアレルギー症状が出るもので、呼吸困難、唇や口の腫れ、意識喪失など、生命の危険を伴うものです。
これはかつて、「牛乳たんぱく質不耐性」と呼ばれていたものです。非IgE依存性牛乳アレルギーは、IgE媒介乳アレルギーおよび乳糖不耐性とは異なります。一般的には乳幼児や子供が発症するものですが、成人してから発生することもあります。
子供が非IgE依存性牛乳アレルギーを持っていると、初めて牛乳を飲んだときに症状が出るかもしれません。主な症状として、湿疹、嘔吐、下痢、胃けいれんなどがあります。IgE依存性牛乳アレルギーと異なり、発疹(じんましん)や呼吸困難は起きません。
また、IgE依存性牛乳アレルギーに比べて、症状が現れるまでに時間がかかります。中には牛乳を飲んでから数時間から数日後に発症する場合もあります。症状が出るのが遅いため、医師が非IgE依存性牛乳アレルギーであると判断を下すまでに時間がかかることもあります。
幼い頃に非IgE依存性牛乳アレルギーを発症した子供も、小学校に上がる頃にはアレルギー症状がなくなっていることがあります。中には大人になるまで症状が出る子供もいますが、ごくまれなケースです。
乳糖不耐性とは、体が「ラクトース(牛乳や乳製品に含まれる糖分の一種)」を消化することができないために起こる消化器疾患のひとつです。乳糖不耐症は、下痢や腹痛、棒満干といった症状を引き起こします。ただし、深刻なアレルギー反応ではないので、生命を脅かすようなことはありません。
牛乳アレルギーの人は、チーズやバターなどの牛乳を原料にした乳製品でもアレルギーを起します。このため、牛乳アレルギーの人は、豆乳や酒かすなどを代用したチーズやアレルギー用ミルクを使用したバターなど、牛乳を除いた製品を利用するようにしましょう。
一般的に広く使用されている薬剤の中には、牛乳の成分が使用されているものもあります。これらの薬を牛乳アレルギーの人が服用するとアレルギーを起こすことがあるので注意が必要です。
代表的な禁忌薬としては、エンテロノン®やラックビー®などの整腸剤の一部の薬剤で、これらは生成過程で脱脂粉乳を使用します。また、牛乳成分であるカゼインは多くの薬剤に使用されており、肝臓保護薬であるアミノレバン®、吐き気止めのタンニン酸アルブミン、降圧剤のエマベリン®Lカプセルなどが挙げられます。
牛乳アレルギーの人は必ず医師や薬剤師にその旨を相談して、アレルギーの起こる可能性のない薬を処方してもらうようにしましょう。
牛乳や乳製品には、たんぱく質やカルシウム、ビタミンB、脂肪分などが豊富に含まれています。このため、子供はもちろん、大人にとっても、日々の食生活の中で乳製品から栄養を摂ることはとても大切です。このため、アレルギーが心配だから……と、医師や栄養士に相談することなく、自己判断で食生活に取り入れないのはもったいないことです。ただ、もし乳製品を食べたときに下痢や腹痛といった症状が出たときは、牛乳アレルギーの可能性があるので、医師に相談してみてください。