飲酒時は要注意!レイプ事件の被害者にならないために

2017/3/23

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

「ドリンク・スパイキング」という言葉を知っていますか?
本人に知られないように、飲み物にお酒や薬物を注入・投入することです。
記憶を失っている間にレイプや窃盗に遭ってしまう――
そんな被害者が後を絶ちません。

海外で被害に遭うケースが多いですが、実際は、恥ずかしさや記憶喪失などの理由で報告されていない事件も数多く存在すると考えられています。
そんな「ドリンク・スパイキング」の危険性や対策を2回にわたってお届けしていきます。
海外旅行を考えている人には、特にご注意を!

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ドリンク・スパイキングは違法行為?

ドリンク・スパイキングは金品を盗むために行われたり、被害者を襲うために行われたり、単なる悪ふざけとして行われたりと理由はさまざまです。
ただ、たとえ理由が何であろうとドリンク・スパイキングは違法行為です。
また、被害者に対してレイプ(※)や強盗を行った場合には、単なるドリンク・スパイキングに比べはるかに重罪となります。
※レイプ:被害者の積極的な同意なしに行われる行為のことを指します。被害者が自主的に薬物やアルコールを摂取した場合もレイプに当たります。

ドリンク・スパイキングで混入されるもの

ドリンク・スパイキングに使われるものとして最も多いのが、アルコールです。本人に知られないままソフトドリンクに加えられているケースがあります(シングルでなくダブルで加えられている場合もあります)。
一方、ドリンク・スパイキングには薬物も用いられます。
これらの薬物は必ずしもレイプに用いられるわけではありませんが、「デート・レイプ・ドラッグ」とも呼ばれています。薬物には以下のようなものがあります。
・γ-ヒドロキシ酪酸(GHB)
・γ-ブチロラクトン(GBL)
・ベンゾジアゼピン系薬物(睡眠薬や抗不安薬として病院で処方されます。)
・ケタミン
形状は粉状のものから錠剤型、液状のものまで多岐にわたります。

また、一部のドラッグ(GHB)にはわずかに塩辛さや匂いがありますが、ほとんどの場合は見た目や匂い、味で違和感を感じるのが困難です。
なお、デート・レイプ・ドラッグはアルコールと混ぜて用いられた際は、極めて強力な麻酔効果を生み出すため特に危険なものとなります。極端な例では、投薬された被害者が昏睡状態に陥ったり、最悪の場合死に至ることもあります。
さらに詳しい情報を得たい場合は、専門機関のWebページを確認してください。

ドリンク・スパイキングに遭ったときの症状

デート・レイプ・ドラッグは15~30分以内に効果が表れ、症状は数時間続く場合がほとんどです。
意識を失ってしまった場合は効果を完全に自覚できないことがありますが、夜の睡眠時にも症状が持続するケースもあります。
症状は混入された物質によって変わりますが、主に以下のようなものがあります。
・集中や会話が困難になる
・平衡感覚の喪失、身体をうまく動かせない
・視界がぼやけるなど視覚に障害が出る
・記憶喪失や瞬間的な失神
・(寝ていた場合)特に目を覚ました後に頭が混乱する
・他人に対して恐怖感や不信感を持つようになる
・幻覚症状や離脱感
・吐き気や嘔吐
・意識を失う

ドリンク・スパイキングに遭わないためには?

飲み物を飲んで、気分が悪くなったり異様に酔っ払ったりした場合には、すぐに周りの人に助けを求めてください。
速いペースの飲酒や飲みすぎは、ドリンク・スパイキングやレイプの被害に遭う可能性を高めるのでやめてください。
特に、知らない・馴染みのない場での飲みすぎは危険です。自制心を失ってリスクの高い決断をしたり、危険に対する意識が希薄になったりすることがあります。

また、以下の方法もドリンク・スパイキングによる被害を防ぐのに有効です。
・飲み物を置いたまま席を離れない(友達の飲み物にも常に注意を向ける)
・知らない人から飲み物を受け取らない
・瓶などで密封された飲み物だけを選ぶ(グラスのカクテルは避ける)
・出会ったばかりの人に住所を教えない
・もし自分の飲み物で異変を感じたら、飲まずに信頼できる人(友達や近親者)に報告する
・出かける前に行き先と帰宅時間を伝えておく
・帰宅ルートをあらかじめ決めておく
・高級品など窃盗されそうなものは身に着けない
・(海外旅行の場合)周辺地域でどこに助けを求めたらいいか、事前に把握しておく
お店によっては、瓶に蓋をするためのプラスチックの栓を提供しているところや、飲み物に異物が混入されていないかの検査キットを用意しているところもあります。

ただ、検査キットは必ずしも全ての薬物に対応しているわけではなく、栓を監視して被害を防げるかどうかもあなた自身にかかっています。「自分の身は自分で守る」という意識が大切です。

おわりに

「ドリンク・スパイキング」の加害者は一瞬の隙を狙っています。ちょっと目を離した隙にアルコールを混入されてレイプされた・・・なんて事件に遭う前に、「飲み物は持ち歩く」「密封されていないお酒は飲まない」などの対策を徹底することが大切です。

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