記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
風邪と肺炎は初期症状では非常に似た症状を発症しまが、どちらものどから肺に至る呼吸器系の炎症であり、咳や痰、熱などの症状が現れます。
この記事では、風邪と肺炎の違いや見分け方、治療方法について解説します。病気の基礎知識として、この機会にきちんと理解しておきましょう。
風邪と肺炎は、以下に挙げるような自覚症状の違いがあります。
風邪の症状 | 肺炎の症状 |
---|---|
|
|
風邪はのどや気管上部の上気道という部位に感染して炎症が起こります。一般的に高熱にはなりにくく、悪寒や筋肉痛なども発症しづらいです。
肺炎は肺の中の肺胞という、呼吸でガス交換を司っている部位に感染して炎症が起こります。咳をしたときに黄色や緑、鉄さび色の色がついた痰が出たり、血痰になることもあります。
そして、インフルエンザウイルスからの二次感染で肺炎を引き起こすこともあり、インフルエンザの流行する時期には特に注意が必要です。
以上のことから考えると、風邪と肺炎の見分け方は熱と痰の状態がポイントといえるでしょう。38℃を超える高熱が出ることや、咳がひどく、色のついた痰が出ることがあれば肺炎を疑った方がいいかもしれません。
また、自覚症状でのどの痛みが強いならば、上気道に炎症を起こす風邪の可能性がありますが、肺の内部に鋭い痛みを感じるようであれば、肺の内部に炎症から起こっている痛みの可能性があります。肺炎を発症しているおそれがあるので、すぐに病院を受診しましょう。
肺炎の治療法は、肺炎の発生原因について大きく2つに分けられます。
原因の種類 | 細菌性肺炎 | ウイルス性肺炎 |
---|---|---|
一例 | 肺炎球菌
肺炎桿菌 マイコプラズマ |
インフルエンザウイルス
アデノウイルス |
治療薬 | 抗生物質 | 対症療法
抗ウイルス剤 |
細菌性肺炎の場合は、細菌のタンパク質合成を阻害し、細菌が分裂増殖するのを防ぐ抗生物質が使われます。抗生物質は特定の細菌に対して効果を発揮する薬剤であり、原因菌が特定された場合は抗生物質を医師が定めた一定期間飲み続けることで、体内の細菌を全て死滅させ、完治を目指します。
ウイルス性肺炎の場合は、抗ウイルス剤が開発されているものは抗ウイルス剤を使用し、それ以外は症状にあわせた対症療法で治療が進められます。
ウイルスはそれ単体で増殖することができず、宿主の細胞に寄生して増殖する微生物です。このような性質から、これまではウイルス単体を増殖阻害することはこれまで困難でした。しかし、バイオテクノロジーや遺伝子工学の進歩により、抗インフルエンザウイルス剤をはじめとして、徐々に抗ウイルス剤の開発は進んでいます。
ただし、これらの原因微生物を特定する検査は、結果が出るまでに時間がかかってしまいます。そのため、通常は検査結果が出るまでの間は症状からある程度細菌性なのかウイルス性なのかを年齢・症状・患者背景などから推定し、治療を始めておきます。このような治療をエンピリックセラピーと言います。そして、検査結果が出た後、治療方針と異なる場合は結果に沿った治療方針に切り替えます。
医師に処方された薬は、なくなるまできちんと飲みましょう。
特に、抗生物質や抗ウイルス剤は、自覚症状が楽になったからといって自己判断で飲むのをやめてはいけません。自覚症状がなくなっても体内にまだ菌が存在している可能性があり、もし細菌が残っている状態で飲むのをやめてしまうと、体内に残った細菌やウイルスが抗生物質や抗ウイルス剤に耐性のある薬剤耐性菌になってしまう可能性があります。
この薬剤耐性菌が体内で再び増殖してしまうと、当然、抗生物質や抗ウイルス剤が効きづらく、治りが遅くなってしまいます。最悪の場合、元の状態よりも症状が悪化することもありますので、十分に注意しましょう。
風邪と肺炎は初期症状では非常に似ており、医師でも見分けるのが難しい病気です。風邪で命を落とすことはそうありませんが、肺炎は悪化すると命に関わることもあります。風邪だろうと自己診断はせず、咳や熱が長く続くようなら早めに医療機関を受診しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。