坐骨神経痛は椎間板ヘルニアが原因って本当?症状や治療法を解説!

2018/6/28

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

坐骨神経は臀部から足先まで通っている長く太い神経です。坐骨神経痛は発症した部位によって症候性、梨状筋性、根性、腰椎性、仙腸関節障害と名称が変わります。
このうち、根性坐骨神経痛と腰椎性坐骨神経痛は、椎間板ヘルニアが原因である可能性があります。この記事では、椎間板ヘルニアが坐骨神経痛を引き起こす場合、坐骨神経痛の症状、治療法などをお話します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

椎間板ヘルニアで坐骨神経痛になるの?!

坐骨神経は、根本の太いところで小指ほどの太さがあり、腰から爪先まで長く伸びている末梢神経です。坐骨神経はハムストリングという太もも裏の筋肉を動かすのに重要な役割を担っており、筋肉が緊張する、血流が悪くなるなどの原因で圧迫されると、痛みや痺れに加え冷感や灼熱感を伴う症状を発症します。

坐骨神経痛の種類

名称 発症部位 概要
根性坐骨神経痛 腰椎の脊柱管内
  • 脊柱管内を通る神経が圧迫される
  • 椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、脊柱管狭窄症などが原因
  • 腰椎性坐骨神経痛の一部とされることもある
腰椎性坐骨神経痛 脊柱管を出て腰椎内
  • 腰椎の関節や靭帯、筋肉などの異変によって神経が圧迫される
  • 椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、脊柱管狭窄症などが原因
梨状筋性坐骨神経痛 臀部
  • 臀部中央の仙骨から太ももへと伸びている梨状筋によって圧迫される
  • 臀部の筋肉の緊張によるコリが原因
  • 患部をあたためる、ストレッチをするなどで臀部のコリをほぐすことで改善される
仙腸関節障害 骨盤の仙骨と腸骨の間の仙腸関節
  • 仙腸関節の異変で骨盤への負担が増し、神経を圧迫する
  • 出産や長時間同じ姿勢を取ることで関節の靭帯が緩んだりねじれたりすることが原因
症候性坐骨神経痛 不明
  • 原因不明のものをまとめて症候性坐骨神経痛と呼んでいる
  • 原因不明のため、治療は対症療法となる

このように、坐骨神経痛は起こる部位によって名称が変化します。椎間板ヘルニアは腰の部分で発症するため、根性坐骨神経痛と腰椎性坐骨神経痛を引き起こします。

根性坐骨神経痛・腰椎坐骨神経痛の起こる原因は三種類

根性坐骨神経痛・腰椎坐骨神経痛を引き起こすのは椎間板ヘルニアの他に、腰部脊柱管狭窄、腰椎すべり症があります。

病名 概要
椎間板ヘルニア
  • 比較的年齢の若い人に多い
  • 椎間板の中にある髄核というゼリー状の部分が椎間板から飛び出し、神経を圧迫する
腰部脊柱管狭窄
  • 中高年に多い
  • 脊柱管が何らかの原因で変形し、内部の神経を圧迫する
腰椎すべり症
  • 中高年に多いが、まれに腰に負担のかかるスポーツなどを頻繁に行う若年層にも
  • 頸椎が前方にずれて脊柱管を圧迫し、脊柱管狭窄と同様の症状を引き起こす

椎間板ヘルニアは主に若年層に多い疾患です。特に、坐骨神経痛を訴える方のうち、20代〜40代では椎間板ヘルニアが、50代以降では腰部脊柱管狭窄が多く見られます。

坐骨神経痛ってどんな症状?

概要 主な症状
下半身の痛み・痺れ
  • 腰や臀部から足まで全ての部位で起こる
  • ピリピリとした鋭い痛みや痺れ
  • ふくらはぎの張り・締めつけ感
  • 冷感・灼熱感
  • 足がつりやすくなる
  • 症状が重くなると麻痺や歩行障害を引き起こすことも
筋肉のこり
  • 背中・腰・臀部に起こる
  • 筋肉が硬直し、コリが現れる
  • コリがない場合、突っ張ったような感覚や違和感が現れる
  • 症状が長く続くと慢性的なだるさや痛みになる
尿もれ
  • かなり重症の状態
  • 尿もれが起こったらすぐに整形外科を受診すべき

坐骨神経痛の主な症状は下半身の痛みや痺れです。坐骨神経の一部が圧迫され、その刺激が神経全体に伝わって痛みや痺れ、締めつけ感などが引き起こされます。また、痛みや痺れによって筋肉が硬直し、突っ張ったような感覚や違和感が起こる場合もあります。肩こりなどと同様の症状で、この症状が長く続くと慢性的なだるさや痛みにつながる可能性があります。

症状が重くなると尿もれ、麻痺や歩行障害につながる危険性があります。特に、麻痺が起こっていない場合でも尿もれが起こっているようならばかなり症状が進行している状態です。ぜひ、すぐに整形外科を受診しましょう。

坐骨神経痛の治療法は?

療法 概要
薬物療法
  • 痛みなどの症状を和らげる
  • 鎮痛解熱剤と同じ非ステロイド系消炎鎮痛剤
  • 神経障害性疝痛治療薬
  • 筋緊張弛緩剤
  • 血管拡張薬
神経ブロック療法
  • 痛みが神経を伝わるのをブロックする
  • 硬膜外ブロック
  • トリガーポイント注射
  • 整形外科、麻酔科やペインクリニックなどで実施
理学療法(リハビリ)
  • 運動やマッサージで代謝・身体機能を改善
  • 運動療法
  • 温熱療法
  • 電気療法
認知行動療法
  • 「できること」に着目し、運動や日常生活の改善を目指す
  • 認知療法
  • 行動療法
外科的療法
  • 手術のこと
  • 坐骨神経痛の治療ではあまり行われることはない
  • 他の治療で効果が得られない場合や、別の臓器に障害が認められる場合に行われる
脊髄刺激療法(脳刺激療法)
  • 脊髄付近に電極を埋め込み、電気信号で脳を刺激して痛みを除去する
  • 主に腰部脊柱管狭窄で用いられる
  • 薬物療法で効果が得られない場合に用いられることも
リエゾン療法
  • 複数の医師が連携し、精神面と身体面の両面から治療を行う
  • 整形外科:身体的原因の治療(薬物・理学・外科的療法)
  • 心療内科・精神科:QOLの向上(認知・音楽療法、アロマテラピー)

坐骨神経痛の治療は、症状が軽ければ薬物療法や理学療法から行われます。非ステロイド系消炎鎮痛剤により、痛みの原因であるプロスタグランジンの生成を抑えて痛みを抑制して日常生活を送れるようにすると同時に、身体機能や代謝の改善に働きかける理学療法や、QOLの向上を目指す認知行動療法を行います。

症状が重い場合や薬物療法で効果がない場合は、神経ブロック療法や脊髄刺激療法を利用して激痛を抑えます。また、坐骨神経痛だけでなく他の部位にも障害がある場合には外科的療法が検討されます。

さらに、これらを組み合わせてリエゾン療法と言われる複数の医師が連携して行う治療になる場合もあります。主に、整形外科やペインクリニックで痛みを抑えながら、心療内科や精神科でQOLの向上を目指すのを並行して行う治療法です。

おわりに:その坐骨神経痛、椎間板ヘルニアが原因かも?無理せず整形外科へ

坐骨神経は太く長い神経であり、一部が圧迫されていても全体に痛みや痺れが現れてしまうため、原因を自己判断するのは難しい症状です。しかし、発症した方が20代〜40代の比較的若年層である場合、椎間板ヘルニアの疑いは強まります。

椎間板ヘルニアは、放置しておくと慢性化し、症状の範囲も広がってしまいます。また、下半身の広範囲に痛みや痺れが続くことで日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。下半身に痛みや痺れを感じたら、無理はせず整形外科などで診断を受けましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

坐骨神経痛(15) 椎間板ヘルニア(27) 神経ブロック療法(6) リエゾン療法(2) 腰部脊柱管狭窄(1)