記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
浮腫(ふしゅ)とは血液やリンパ液の流れが滞ることで、足や顔など身体の一部がむくむ症状のことですが、通常は痛みや腫れなどを伴うことはありません。
今回は、浮腫とともに痛み・腫れの症状を伴うことのある「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という病気について、その原因・症状・治療・予防法まで解説していきます。
浮腫・むくみの原因には生活習慣や病気、また病気治療のための副作用などの可能性が考えられますが、いずれの場合も基本的には痛みや腫れを伴うことはないとされています。
ただし、浮腫・むくみのなかでもリンパ液の流れが滞ることで起こる「リンパ浮腫」では、重症化・悪化することで皮膚の赤みや腫れ、痛みを伴うことがあります。リンパ浮腫は特に病気治療のためにリンパ節を切除した場合などに起こりやすく、重症化すると皮膚の硬化を伴い、さらに悪化すると皮膚の乾燥や痛み、腫れ、感染症などを引き起こします。
また、リンパ浮腫が起こったときに身体に細菌が侵入すると炎症が広がり、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼ばれる合併症を起こすこともあります。
蜂窩織炎は「蜂巣炎(ほうそうえん)」とも呼ばれる皮膚炎の一種で、皮膚の下の蜂窩織(ほうかしき)と呼ばれる細胞に細菌が感染して、炎症を起こす感染症です。
発症の直接的な原因は虫刺されやちょっとした外傷など傷口からの細菌感染ですが、身体の抵抗力が下がっているときには、合併症として発症しやすくなります。具体的には、リンパ浮腫をはじめ白癬など皮膚疾患、糖尿病、肥満などが原因の合併症となり得ることで知られています。
蜂窩織炎を発症すると、足のすねや甲の皮膚を中心に、以下のような症状が出てきます。
皮膚の赤み・熱感・腫れ・痛みは特に感染を起こしている箇所に見られますが、リンパ浮腫を起こしているところにも表れやすいのが特徴です。
また、放っておくと細菌感染が皮膚だけでなく筋肉にまで及び、筋肉と周辺組織が壊死する「壊死性筋膜炎」にまで症状が進展することもあります。
蜂窩織炎によって浮腫に痛みや赤みが出てしまった場合は、抗菌薬を使った薬物療法で治療していきます。蜂窩織炎の原因は細菌感染であるため、医師の指示のもとで5~14日間くらい点滴や薬の内服を続けることで、症状改善と体内からの細菌排除が期待できます。
なお、症状が軽度なら通院での治療が可能ですが、症状が重度で筋膜炎や皮膚の潰瘍にまで進展する恐れがある場合などは、入院しての治療が必要になります。
前述した治療期間もあくまで目安であり、患者の状態によっても変わってきますので、治療法や薬の種類、期間については医師の判断に従いましょう。
蜂窩織炎の原因は細菌感染なので、浮腫が出ている皮膚を清潔に保つことで予防できます。
浮腫が出ている箇所はこまめに洗うようにし、皮膚をきれいな状態にして感染から守りましょう。
また、細菌は傷口から感染しますので、ケガはもちろん湿疹・アトピー性皮膚炎・虫刺されのかきむしりによる、小さな外傷にも注意が必要です。
患者だけでなく周囲の方も、浮腫が出ている皮膚の状態に注意を払うようにし、定期的に洗って傷の有無を確認し、心配なら医師に相談して抗菌薬を塗るなどの対策を行ってくださいね。
むくみだけでなく、むくんでいる皮膚に赤み・痛み・腫れの症状がある場合は、浮腫の合併症である「蜂窩織炎」を起こしている可能性が高いです。蜂窩織炎は浮腫の悪化により発症しやすい感染症ですが、放っておくと皮膚の潰瘍や膿、筋膜炎まで進展する恐れもある恐ろしい疾患です。軽症なら通院での薬物治療で治せますので、少しでも浮腫に赤みや痛みを感じたら、すぐに病院に行ってください。