記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/29 記事改定日: 2019/6/17
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
発達障害の一種である「アスペルガー症候群」という精神障害を知っていますか?
今回は聞いたことがあっても知らないことも多い「アスペルガー症候群」について、その原因や症状の特徴、兆候を感じたときの対処法までご紹介します。ぜひ、アスペルガー症候群への理解に役立ててください。
アスペルガー症候群は人によって異なる経緯・経路から発症すると考えられているため、すべての人に共通する原因を特定することは、非常に難しいといわれています。
このため、現在もはっきりとした発症原因はわかっていませんが、近年の研究によって、アスペルガー症候群の発症については、以下の3点がわかってきました。
特に「遺伝的要因」についての研究は盛んで、家族間や一卵性双生児の発症一致率が高いことから、遺伝子が発症になんらかの原因を及ぼしているのは間違いないとされています。
ただ、一卵性双生児・家族間の発症一致率も100%ではありません。だからこそ、先天的な遺伝的要因だけでなく、後天的な「環境的要因」の両方が複雑に作用することにより、アスペルガー症候群が発症すると考えられているのです。
アスペルガー症候群の症状には、会話そのものは可能なのにうまくコミュニケーションが取れず、周囲と良好な対人関係を築くことができないという特徴があります。言葉は理解できても、相手の表情や行間、相手と自分との関係性を加味した受け答えをすることが難しいため、相手の意図を理解できず傷ついたり傷つけられたりしてしまうのです。
具体的には、コミュニケーションにおいて以下のような特徴が見られます。
アスペルガー症候群では周囲から理解されにくい様々な症状が引き起こされ、周囲から「落ち着きがない人」、「ミスが多い人」、「人の気持ちが分からない人」などと思われがちになります。その結果、周囲から孤立したり、生きづらさを感じ続けることで心身や行動に支障を生じる二次障害を発症することがあります。
アスペルガー症候群で問題となる二次障害としては、非行や暴力などの犯罪行為を行うようになる行為障害、抑うつ気分や不安障害、引きこもりなど情緒的な変調が挙げられます。
これらの二次障害を予防するためにも、アスペルガー症候群の人には適切な対処が必要です。
大人の場合は、職場や家族など周囲の人が業務内容や働き方などを最大限に配慮して患者の負担にならないような内容に工夫し、できることや得意なことを積極的に取り入れる体勢作りが必要です。子供の場合は、学校や幼稚園などの集団生活の場で孤立しないよう親や教師が配慮し、必要であれば支援学級などの利用も検討する必要があります。
意図せず周囲を傷つけてしまうことがある、コミュニケーションがうまくいかないなどアスペルガー症候群の兆候を感じたときは、できるだけ早く専門機関に相談しましょう。
専門機関では症状の相談の他、診断のできる病院の紹介も受けられますので、以下を参考に子供・大人のそれぞれを対象とした機関を上手に利用してください。
自分や家族にアスペルガー症候群が疑われる場合、専門機関に相談してプロのアドバイスをもらうことで、気持ちの持ちようも大きく変わってきます。
また、子供の場合は早期に療育やアスペルガー症候群に合った教育方法を実践することでその後の経過も変わってきますので、覚えておいてください。
まだまだ発症原因にも不明点が多く、人によって症状が異なることもあるアスペルガー症候群ですが、全体として「コミュニケーションの困難」が見られるのが大きな特徴です。自分ではそんなつもりがないのに発言で周囲の人を傷つけたり、遠ざけてしまって辛いという人は、アスペルガー症候群かもしれません。自分や家族に特徴的な症状を感じたら、できるだけ早く専門機関に相談してみましょう。