記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/7/5
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
日本でデンタルフロスを日常的に使っている人は、他国と比べて非常に少なく、デンタルフロスの効果に懐疑的な人も少なくありません。では、デンタルフロスを使うことで具体的にどんな効果が得られるのでしょうか?結局効果があるのかないのか、詳しく解説していきます。
「虫歯を予防するにはデンタルフロスを使ったほうがいい」とはよく聞きますが、デンタルフロスには具体的に以下の効果があると考えられています。
デンタルケアの基本は歯ブラシでの歯磨きですが、歯ブラシだけでは歯と歯の間など毛先が届かない部分が出てくるため、実際の歯垢除去率は6割ほどといわれています。しかし、デンタルフロスを使えば歯の隙間や表面の歯垢も除去できるため、全体の歯垢除去率が8割程度に上昇するとされています。
歯垢は時間が経過すると石灰化し、歯石になるのですが、歯石は歯垢よりもたくさんの細菌を含んでおり、歯磨きではなかなか除去できません。また、一度歯石ができるとさらにその場所に歯石が溜まり、虫歯や歯周病になりやすくなってしまいます。
しかし、歯石の多くは歯と歯の隙間に発生するため、デンタルフロスを使うことで隙間の汚れを除去できればプラークの発生や歯石の蓄積を防ぐことができ、虫歯や歯周病予防にもつながります。
デンタルフロスを使うと、歯ブラシだけでは気づけない異変を発見できる確率が上がるため、初期虫歯や歯周病の早期発見に役立ちます。以下の項目に当てはまる数が多い場合は要注意です。
口臭の主な原因は歯に残った食べかすや歯垢ですが、デンタルフロスを使えば、歯ブラシだけではとるのが難しい歯垢や汚れもしっかり除去できるため、口臭予防にもつながります。
歯の詰め物や被せ物は、経年劣化によって外れたり、不安定になったりすることがありますが、デンタルフロスを使う習慣があればこうした異変にいち早く気づくことができます。デンタルフロスの糸が入らなかったり、ひっかかったり、糸が切れたりする場合は補填物が外れかけているサインの可能性があるので、一度歯科で確認してもらいましょう。
近年、AP通信が「デンタルフロスの効果を裏付ける十分なエビデンスはない」という調査結果を発表したことから、デンタルフロスを使っても効果がないというイメージを持ってしまっている方もいるようです。
しかし、「エビデンスが弱い」というのは「検証結果を示すデータが不足しており、効果が明確にわかっていない」という意味であり、決して「効果がない」という意味ではありません。また、予防歯科の観点からいえば、歯間の汚れを除去することはとても重要であり、歯ブラシだけでは除去できない汚れも落とせるデンタルフロスは有用なアイテムです。虫歯や歯周病予防のためには、歯ブラシだけでなく、デンタルフロスの使用も大切と考えられます。
デンタルフロスを使うと、歯ブラシでは除去できない部分の汚れや歯垢が取り出せたり、歯石化を防いだりすることができるため、歯周病や虫歯・口臭予防の効果が見込めると考えられています。日々のオーラルケアを歯ブラシだけで済ませてしまっている人は、ぜひデンタルフロスも習慣に取り入れてみてください。