過呼吸で痺れが起こる原因って?痺れにはどう対処すればいい?

2018/7/13

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

過呼吸の状態になると、息苦しさだけでなく、手足の痺れに見舞われることがあります。この手足の痺れは、どういうメカニズムで起こる現象なのでしょうか?原因と対処法をお伝えします。

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過呼吸で痺れる原因は?

過呼吸とは、浅くて速い呼吸を必要以上に繰り返し、息苦しくなる状態です。極度の緊張や不安、恐怖など心因性の要因のほか、ストレスや疲労といった身体的要因が原因となることがあります。

過呼吸が起こると息が苦しくなるだけではなく、手足の痺れやめまいなど、体の症状があらわれることがあります。そもそも、呼吸をコントロールしている神経(呼吸中枢)は、大脳の下側の延髄という部分にあります。人間は息を吸うことと吐くことをバランスよく行うことで、血液中に酸素を取り込み、不要になった二酸化炭素を排出しています。

しかし、過呼吸によって血液中の酸素濃度が高くなると呼吸中枢が「呼吸のしすぎ」と感じ、呼吸の回数を減らすように指令を出します。すると大脳皮質は呼吸ができない状態を異常ととらえて、呼吸をさせようとします。この2つの指令が行き違うことで、息をどんなに吸っても苦しいという悪循環になり症状が悪化します。

また、人間の体液は中性に近い弱アルカリ性に保たれていますが、血液中の酸素が増えるとアルカリ性に傾きます。血液がアルカリ性に傾くと血管が収縮して、血液が体のあちこちに届きづらくなります。すると、脳の血流が減ってぼーっとしたり、手足にも血液が行き届かずに痺れや筋肉のけいれんが起きたりするようになるのです。

過呼吸による痺れの対処法は?

過呼吸を落ち着かせるためには、吸いすぎている酸素の量を調整することが必要です。しかし、過呼吸を起こしている人は、苦しさのあまりますます呼吸が速くなることがあるため、まずはできるだけ安心させることが大切です。簡単な会話は、気持ちを落ち着かせるだけではなく呼吸が整うことにもつながります。

呼吸の方法は、息を吸うことよりも吐くことに重点をおく必要があるので、深く吸ったり吐いたりを繰り返す深呼吸は行ってはいけません。いったん吸うことを止めて3〜5秒くらいかけて吐き、呼吸をゆっくりにさせる方法があります。

なお、紙袋を口にあてるペーパーバック法は、紙袋に吐いた息を再び吸うことを目的にした方法ですが、注意が必要なため現在では推奨されていません。二酸化炭素が含まれた息を吸うことで血液中の酸素濃度が急激に低くなり、窒息状態になるというケースも起こっています。むやみに行うことは止めましょう。

また、精神疾患やうつ病、パニック障害などの既往がある人は、適切な治療を受けることが過呼吸の予防につながることがあります。

おわりに:過呼吸のときは安易にペーパーバック法を使わず、適切な処置を

過呼吸の状態に陥ると、息が速く浅くなり、手足の痺れやめまいといった全身症状があらわれるようになります。この過呼吸への対処方法としては、できるだけ本人を安心させて呼吸のリズムを整えることが重要ですが、深呼吸ではなく吐くことに重点をおくことがポイントです。かつて用いられていたペーパーバック法は事故を起こすこともあるので、安易に行うことは止めましょう。

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