記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
さまざまな病気を治すのに、「体質改善」という言葉を耳にすることがあります。身体を守ってくれる免疫機能を強化したり、免疫機能がその力を十分に発揮できるように体内環境を整えたりすることが体質改善の主な考え方です。
では、免疫機能の過剰反応であるアレルギー性鼻炎は、体質改善で治るのでしょうか?
体質改善でアレルギー性鼻炎を治す方法について、解説します!
体質改善でアレルギー性鼻炎を治す方法の代表的なものが、減感作療法(げんかんさりょうほう)です。減感作療法は、アレルゲンと呼ばれるアレルギーの原因物質をごく少量ずつ体内に入れていくことで、過剰な免疫反応を抑える治療法です。
減感作療法は、免疫療法や脱感作療法とも呼ばれます。免疫が過剰に働いて起こっているアレルギー反応を和らげ、過剰な反応を少しずつ正常な免疫反応に戻す目的で行われます。
アレルギー反応には、この量以下なら反応が起こらないという「暴露量」という限度が存在しています。暴露量ぎりぎりのアレルゲンを投与し続けることで、少しずつ身体をアレルゲンに慣らしていきます。すると、だんだんと免疫がアレルゲンに対し、過剰な反応を起こさなくなっていきます。徐々に投与量を増やしていき、暴露量が日常生活に支障をきたさないレベルまで治療を行います。
減感作療法には、注射療法と舌下免疫療法の2種類があります。
種類 | 治療方法 |
---|---|
注射療法 |
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舌下免疫療法 |
|
注射療法は、保険適用の範囲となることから広く行われている減感作療法です。毎週1〜2回の注射から始まり、徐々に間隔を長くしていきます。治療は即効性があるものではなく、最低でも3年以上の継続が必要となります。
舌下免疫療法は、日本ではまだ保険適用ではない治療法です。海外では既に治療実績が積まれているため、治療法として取り入れている病院もありますが、治療法として使うかどうかはそれぞれの病院の判断に委ねられています。こちらも毎日1回の滴下から始まり、徐々に間隔を空けていきます。即効性がないのも同じで、2年以上の継続が必要な治療法です。
減感作療法では、ごく少量ではありますがアレルゲンに直接接することになります。そのため、まれに喘息や咳などの副作用が起こる場合があります。
また、海外での治療実績によると、舌下免疫療法の方が注射療法よりも副作用の報告が少ないという結果が出ています。ただ、舌下免疫療法の方が注射療法よりも副作用の報告が少ない理由については、まだわかっていません。
体質改善には、生来の自然治癒力を高めるという考え方のもとで治療を行う漢方も有効です。では、漢方薬でアレルギー性鼻炎を治すことはできるのでしょうか?
漢方での鼻炎の考え方と、その治療法についても見ていきましょう。
漢方では、アレルギー性鼻炎の鼻水・鼻づまりは「水(すい)」の停滞によるものだと考えられています。「水」とは、飲食物に含まれる水分を消化吸収し、体を潤すものです。
この「水」の代謝・排出がうまくいかず、体に溜まってしまうと、余分な水分が体を冷やして体を守る力が低下します。そして、アレルゲンが体内に入りやすくなるのです。体内に侵入したアレルゲンによって、「水」が十分に排出できなくなり、さらに体に「水」がたまりやすくなります。
溜まりすぎた「水」は、通常の排出経路以外のところから外に出ようとします。この「水」が鼻からあふれると鼻水、鼻に溜まった状態が鼻づまりと考えられています。
漢方の考え方によって鼻炎を治療するには、「水」の停滞を解消し、正しい経路から排出させることが必要です。鼻水と鼻づまりそれぞれについて、処方されることの多い漢方をご紹介します。
「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」は、「麻黄(まおう)」という生薬が含まれています。「麻黄」は「水」の停滞を解消する生薬で、これによって「水」の正常な代謝を促します。
その他、「芍薬(しゃくやく)」や「乾姜(かんきょう)」などの生薬が含まれており、「水」によって冷えた部分を温めながら水分の代謝を促進する効果があります。また、眠くなる成分は含まれていないため、仕事で運転される方でも安心して飲むことができます。
「葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」は、体を温める「葛根(かっこん)」と、「水」の排出を促す「麻黄(まおう)」の両方が含まれています。
鼻づまりは、「水」が鼻に溜まったまま排出されない状態です。そこで、うっ血して閉じてしまっている鼻粘膜にも血流から働きかけることで、「水」の排出を促し、鼻づまりを解消します。また、この漢方にも眠くなる成分は含まれていないので、運転する必要があるときでも安心して飲むことができます。
体質改善は、日常的に食べるものから働きかけることもできます。免疫機能を高める、体に足りないものを補給する、などの方法で体質改善を行うのが食事療法です。
アレルギー性鼻炎に対しても、ある程度症状を和らげる効果が期待できる食品はあります。しかし、食事はあくまでも症状を軽減するものであり、重症の場合は効果が見られないこともあります。症状が酷いときは、医師の診察を受けるようにしましょう。
アレルギー性鼻炎によって、鼻や目に症状が現れた場合は以下の食品がおすすめです。
シソは、ビタミンやミネラルを豊富に含んでいます。その中でも、赤シソに含まれるポリフェノールは、アレルギーを軽減する作用があることで知られています。また、シソ油に含まれるα-リノレン酸にも、体内に入った後でEPAに変化し、アレルギーを抑える作用があります。
免疫機能全般に働きかけるには、以下の成分がおすすめです。
乳酸菌は、ヨーグルトなどに含まれている善玉菌と呼ばれる細菌です。腸内の環境を整えてくれる菌であり、免疫細胞に働きかけて免疫力を高めてくれます。
また、健康食品として知られるプロポリスも、免疫機能を整える力があります。プロポリスとは、ハチが巣を補強したり巣の腐敗を防ぐために使っている植物由来の物質です。免疫機能を正常化する作用の他、炎症を抑える作用もあります。
アレルギー体質そのものに働きかけるには、以下の成分がおすすめです。
クロレラやスピルリナは、藻類に分類される単細胞生物です。タンパク質が豊富で、免疫の活性化や肝機能改善、抗酸化作用などが注目されています。
エキナセア・ネトルはハーブで、ハーブ茶として飲むのが一般的です。どちらも個人差はありますが花粉症の予防やアレルギー反応抑制に効果があるとされています。
サジーはフルーツで、こちらもジュースとして飲むことが多いです。非常に栄養価の高いフルーツで、ビタミンCや鉄分を多く含み、抗酸化力も高いことからスーパーフルーツとも呼ばれています。
体質改善でアレルギー性鼻炎を治すには、減感作療法が最も治療効果が高いとされており、現状でアレルギー性鼻炎をほぼ完治することができる唯一の方法といわれています。また、漢方や食品からの体質改善も、個人差はありますが、合うものに巡り会えれば十分な効果が期待できます。
しかしいずれの方法も、即効性のあるものではありません。根気よく続けることが、体質改善からアレルギーを治すのには不可欠です。