記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
仕事の都合で人前でプレゼンテーションをすることになったとき、過剰な不安を感じたり、動悸や手足の震えが止まらなくなったりしたことはありませんか?もしかしたらそれは「対人恐怖症」のサインかもしれません。以降では、対人恐怖症の主症状や診断方法についてご紹介していきます。
対人恐怖症とは、自分が周囲の人からどう思われているか過剰な不安を持ち、人との交流や人前での行為などを回避することで、日常生活に支障が出てしまう症状のことです。
対人恐怖症は「あがり症」などともいわれ、世間一般でよく知られていますが、実はこれは医学上の正式な疾患名ではありません。近年では不安症の一種である「社会不安障害」に含まれる症状の一つとして、とらえられるようになっています。
対人恐怖症で現れる症状には、精神症状と身体症状の2つがあります。それぞれの具体的な症状について解説します。
なお、実際の診断の流れですが、まずは問診によって上記の症状の有無や、どんな状況をもっとも恐れているか、何歳ごろから意識するようになったか、きっかけはあるか、実際に人前で恥をかいたことがあるかなどを詳しく尋ね、その結果をもとに診断を行うのが一般的です。医療機関によっては、専用の質問票の回答結果を診断基準とする場合もあります。
また問診のほかに、血液検査を行うことがあります。手の震えや動悸などの身体症状は、甲状腺機能亢進症など別の病気でも起こりうる症状のため、そういった他の疾患がないかチェックする意味で行います。
対人恐怖症は、不安症の一種である「社交不安症」とよく似ていますが、厳密には両者は同じではありません。ただ、医師によって両者の位置付けに関する意見は異なるため、統一された見解はないのが現状です。
現在のところ、対人恐怖症は「自分が周囲の人を不快にさせていないかという不安」、社交不安症は「注目を集める場面で、恥ずかしい思いをすることに対しての不安」という違いがあると考えられるようになっています。
なお、アメリカ精神医学会の「DSM-5」(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)の中では、対人恐怖症は「文化症候群」の一種と位置付けられています。日本は世界と比べて他人の目を気にする傾向にあり、そうした「恥の文化」が発症背景の一つと考えられているからです。
このDSM-5の中で、対人恐怖症は以下のように定義されています。
「社会的交流において、自己の外見や動作が他者に対して不適切または不快であるという思考、感情、または確信によって、対人状況についての不安および回避が特徴である文化症候群である」
人前に出ると緊張したり、不安を感じたりするのは誰しも経験のあることですが、その恐怖の程度が過剰であったり、身体症状もみられるようならば、対人恐怖症の可能性があります。
対人恐怖症は放置していても自然に改善する可能性は低く、むしろ悪化してしまう傾向にあるため、早めに専門機関で診断・治療を受けるようにしましょう。薬物療法や心理療法を適切に行うことによって、改善が見込めます。