記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/23 記事改定日: 2020/9/2
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
褥瘡の処置や手順はわからないことも多く、始めのうちは不安が大きいかもしれません。この記事では、褥瘡処置の注意点、ガーゼやドレッシング材の扱い方などを紹介します。また、公的支援である福祉制度についても紹介しますので参考にしてください。
褥瘡の流れについて説明していきますが、具体的な処置内容は症状によって異なるため、処置前には事前に医師や看護師から自身の症状の状況(発症原因、状況、今後の処置やケアの方法)を確認するようにしましょう。
手が汚れていると、処置を行う際に細菌が侵入する恐れがあるため、しっかりと手洗いをした後に手袋を装着しましょう。
傷が確認できるように、膝や腹部に枕などを入れて体位を整え、両手で処置を行えるようにしましょう。
傷のある場所の下に、おむつや尿取りパッドを敷いて、塗布した薬剤や洗浄液が流れ落ちて下着・ベッド・布団などを汚さないようにしましょう。
また、褥瘡の見逃しを防ぐため、数日に1度は体位を変えて、観察や処置を行うようにしましょう。
ドレッシング材(被覆材)は、皮膚に傷をつけないように、ゆっくり焦らずに剥がしましょう。
ガーゼが皮膚に強くひっついている場合は、水で洗い流しながら取り除くと、負担をかけずに剥がすことができます。
褥瘡の周囲の皮膚は、洗浄剤をよく泡立ててから、やさしく洗いましょう。
洗い終わった後は、不織布やタオルなどで傷につかないように気をつけながら、洗浄剤を拭き取ります。
その後、手袋を装着した手で傷の周囲の皮膚をぬるま湯で洗い流します。もしも傷に洗浄剤がかかってしまっても、心配する必要はありません。
また、褥瘡の傷部分を洗浄する時は、洗浄剤ではなく、生理食塩水や水道水のぬるま湯を使用して、洗浄ボトルを用いて洗いましょう。
渇いた不織布で丁寧に拭き取りましょう。
褥瘡を観察するときは次のようなポイントに注意しましょう。
褥瘡の重症度を評価する際には、上記に挙げたポイントに注意し、それぞれの項目に変化があるか確認することが大切です。状態が悪化している場合は、褥瘡への対策が不十分であると考えられますので、治療や対策を見直す必要があります。
また「DESIGN-R」と呼ばれる褥瘡を評価するスケールもありますので、活用するのもおすすめです。
医師が、適切な薬剤やドレッシング材の選択・処方を行います。
薬剤やドレッシング材を使用する際は、事前に医師や看護師に使用方法(使用量、交換回数、注意点など)について確認しておきましょう。
テープを使用するときは、まず最初に中央部を押さえてから、外側を押さえて貼るようにしましょう。
洗浄剤に石鹸および合成洗剤を使うかの選択は、皮膚の状態を見て判断する必要があります。国内のガイドラインでは、褥瘡の治療では「弱酸性洗浄剤を使用して洗浄を行ってもよい」とされていますが、これは弱酸性洗浄液が褥瘡の治癒するうえで効果的というわけではありません。
ただし、皮脂量の減少がみられる人の場合(高齢者など)は、アルカリ性洗浄剤と比較すると、弱酸性洗浄剤の方が皮脂の喪失量が少なくすむといわれています。
創内部の洗浄をする際には原則として洗浄剤は使用せず、もし創部に洗浄剤が入った場合は速やかに洗い流す必要があります。
創部を洗浄する目的は、創表面に存在する細菌類を減少させることです。洗浄する際には生理食塩水または水道水を使用することが国内のガイドラインで推奨されています。
また、同様に「NPUAP/EPUAPガイドライン(2009年)」でも壊死組織のない褥瘡に生理食塩水および水道水を使用することがよいとされています。
ただし、明らかに感染が認められる創部の場合は、殺菌作用のある洗浄剤を用いることが認められており、洗浄液の温度は38℃ほどが良いとされています。
ドレッシング材には様々な種類のものがあり、それぞれ役割が異なります。一般的に広く用いられているドレッシング材の種類と役割は以下の通りです。
ポリウレタンに粘着剤を塗布したドレッシング材で、創を保護するために用いられます。浸出液と共に創を覆うことで、湿潤環境を整え、自然な治癒を促す作用が期待されます。
創の閉鎖と湿潤環境を維持する役割を持つドレッシング材です。ポリウレタンフィルムよりも密閉性が高く、湿潤環境を長く維持できます。また、創への水分や細菌などの侵入を強力に防ぐ働きもあります。
乾燥した創を水分によって柔らかくし、壊死した組織の融解を促す作用を持ちます。シート上のものとジェル状のものがあり、シート状のものは湿潤環境を維持し、炎症や痛みを和らげる効果があります。また、ジェル状のものは上皮形成を促す効果もあるとされています。
創から分泌される浸出液を吸収する役割を持つドレッシング材です。創内部に溜まった浸出液を吸収するため、浸出液が多く他のドレッシング材では浸出液が漏れ出るような場合に用いられます。
抗菌効果のある銀イオンを含んだドレッシング材で、創への感染を予防する役割を持ちます。
以上のように、ドレッシング材には多くの種類があります。種類を選ぶポイントは、感染の可能性があるかどうかを見極めることです。感染した創や感染のリスクが高い創には、銀含有ハイドロファイバーなどを用い、密封性の高いものは感染を悪化させることがありますので使用を控えましょう。
また、浸出液の量や創の状態などを見て、適度な湿潤環境を維持できるものを選ぶとよいでしょう。
在宅で褥瘡患者の療養を行う場合は、家族が中心となり行うことが多いですが、介護が不十分の状態になると他の合併症などが起こる確率が高くなるため、介護の手が足りない場合や家族だけでは処置が難しい場合は、以下のような公的制度を利用することがすすめられます。患者さんの症状や年齢に合ったサービスを受けるようにしましょう。
褥瘡患者の利用者が多い介護保険制度は、40歳以上の人の加入が法律で義務付けられている社会保障制度です。介護保険の給付は、市町村の「要支援・要介護認定」で支援が承認された人に対して行われ、「予防給付」「介護給付」のどちらの場合でも受けることができます。
申請をする際は、居住地の市区町村役所の窓口に行って行います。また、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者の代行も認められているため、サービスの利用を希望する人は、お住いの地域の担当窓口に問い合わせましょう。
褥瘡の処置では事前に医師や看護師から自身の症状の状況を確認してから、創部や創部周辺の洗浄や保護などを行うことが大切です。また、家族だけでは介護が難しい場合は、介護保険、健康保険、身体障害者自立支援法などの公的な制度を受けることを検討してみましょう。