記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/24 記事改定日: 2019/7/31
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「脇見恐怖症」をご存知ですか?聞き慣れない病名かと思いますが、自分の脇見をした視線が周囲に不快感を与えているのではないかと、過度の恐怖心を抱く症状をいいます。今回はこの脇見恐怖症の対策や具体的な症状について解説していきます。
脇見恐怖症とは、自分の視線が相手に不快感を与えているのではと過度に不安になり、日常生活に支障が出てしまう症状です。道端ですれ違った人、カフェで向かいの席に座った人など、視界に入った人と目が合っているように感じます。
そのため、「相手に不快な思いをさせているのでは」と考えてしまったり、それを確認するために相手を見なくてはいけないように考えて実際に相手を見てしまうなど、意識が過剰に向いてしまうのが特徴です。症状が進行すると、視線をどこにやったらよいかわからなくなり、人と関わるのが怖くなったり、外出自体を避けるようになったりします。
基本的には人に対して起こる症状ですが、物に対して脇見が起こることもあります。この場合は不快感を与える不安より、読書や勉強などに集中できないことで苦しむようになります。
なお、脇見恐怖症は正式な病名ではなく、アメリカ精神医学会が作成する精神疾患・精神障害の分類マニュアル(DSM)にも診断基準は記載されていません。医学的には視線恐怖症の一種としてとらえられています。
脇見恐怖症の主な発症原因は、誰かを注視したときに「ジロジロ見ないで」と怒られたり、指摘されたりした経験です。こうした経験から、自分の視線が他人に不快感を与えているのではと過度に心配するようになります。また、そういった経験はなくても、脇見をしたときに咳払いをされた体験などをネガティブに解釈してしまう確証バイアス(思い込みの強化)が原因の場合もあります。
つまり、脇見恐怖症の主な原因は、視線に対する過剰な意識や強い思い込みのため、抗不安薬を飲んで不安を和らげても、脇見をする行為自体はなかなか改善しません。対策としては、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法を通じて、自分の視線に関する過度の思い込みを払拭するのが有効です。特に認知行動療法は、事実をありのままに受け止め、余計な解釈を取り払い、不安の増大を防ぐのに効果的なアプローチとなります。
脇見恐怖症は認知度が低く、正式な病名としては扱われていません。しかし、該当する症状で悩む人は、日本人の場合少なくないといわれています。脇見恐怖症は認知行動療法などで改善する傾向にあるので、脇見恐怖症によって日常生活に支障が出てしまっている方は、専門外来を受診されることをおすすめします。