記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
自身はかなり痩せているにもかかわらず、太るのを恐れるあまりに食事を拒否してしまう拒食症。拒食症の患者さんは、治療中も食事の摂取や栄養補給に難航する傾向が強いとされていますが、どう対処していくのが有効なのでしょうか?
拒食症とは、「痩せたい」という体重への極端なこだわりや、「自分は太っている」という思い込みなどから食事をほとんど摂らなくなってしまう病気です。摂食障害の一種で、医学的には「神経性食欲不振症(AN)」と呼ばれます。
拒食症は10代での発症率が高く、そのほとんどが女性です。拒食症の人の主な特徴としては、以下のことが挙げられます。
拒食症の人は「痩せたい」という強い思いがあるため、食事を拒否したり、病院での治療を拒否する傾向があります。しかし、拒食症を放置していると低栄養から心身の不調をきたし、最悪の場合命を落とす恐れもあるため、早期に治療を開始することが重要です。
【 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス総合サイト の情報をもとに編集して作成 】
拒食症の人は治療によって体重が増えることを過剰に恐れるため、単純に食事で栄養補給をするのは難しいです。専門医によるカウンセリングや心理療法を通じて、徐々に自分で栄養補給ができるように変化させていく必要があります(極度に低体重の人の場合は、入院のうえ点滴による栄養補給が必要になります)。
医療機関によって治療方法は多少異なりますが、拒食症への治療では以下のことが行われるのが一般的です。
カウンセリングなどを通じて、「自分は太っている」という思い込みなど、極度の認知の歪みを自覚・改善していく心理療法です。はじめに食事日誌をつけ、自身の食生活や食事に対する考え方を点検する「認知再構成法」などを通じて、体重や体型に固執している価値観を自覚し、それを徐々に解きほぐしていきます。
カウンセラーに悩みや困りごとを打ち明けることで、拒食症の原因となっている心の問題を振り返る作業です。患者自身が自分の経験と向き合い、置かれた状況を把握できるようにし、解決策を考えていきます。
食生活の指導を行うことで、低栄養などを治療し、標準体重への回復を目指します。
拒食症に伴う抑うつや不安などの精神的な症状や、身体的な症状を治すために、抗うつ薬や精神安定剤、ホルモン剤、ビタミン剤などを処方します。
食事や栄養補給を拒否する患者さんは、通院や退院後も簡単に食事をとれるようにはなりません。そこで、入院中に行われることがあるのが行動制限療法です。スマートフォンの利用や両親の面会、病棟内での自由行動などを、自分で十分な量の食事を摂取するまで禁止する、という治療法になります。
ただし、拒食症の治療の初期段階では、たとえ食事をしても思うように体重が増えないことも少なくなく、患者さんの努力と体重が比例するわけではないという点から、近年ではこれを実施しない病院も増えてきています。
拒食症の人は体重が増えるのを極端に恐れるため、自力で食事をとって栄養補給をするのは難しい傾向にあります。専門医のもとで心理的なケアを受けつつ、長い時間をかけて食事の問題を解決していく必要があるので、まずは専門の医療機関を受診するところから始めましょう。