高齢者の尿路感染症の原因は?どうすれば予防できるの?

2018/8/7 記事改定日: 2019/1/30
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

尿路感染症とは尿路(腎臓から尿道までの尿の通り道)に生じた感染症のことです。
尿路感染症は性別や年齢を問わず発症する病気ですが、今回は高齢者の尿路感染症の特徴について解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

高齢者の尿路感染症の特徴は?

尿路感染症は性別や年齢に関係なく発症する病気です。
ただ、高齢者の場合は何かしらの泌尿器疾患を持っている可能性が高く、「複雑性尿路感染症」であるケースが多いです。

そもそも尿路感染症は大きく「単純性尿路感染症」と「複雑性尿路感染症」に分けることができます。これらの違いは「基礎疾患の有無が関係しているか」で、簡単にまとめると以下の通りです。

単純性尿路感染症
泌尿器系の基礎疾患がない方の尿路感染症のこと
複雑性尿路感染症
尿路に何かしらの基礎疾患がある方の尿路感染症のこと

尿路の基礎疾患には、たとえば、前立腺肥大症や過活動膀胱などがあります。これらの病気は加齢が関係しているため高齢者が患う可能性が高く、その影響で尿路感染症を発症しやすくなります。

複雑性尿路感染症の治療は難しく改善しにくいです。これは基礎疾患があるため再発・再燃しやすいからであり、「耐性菌」という抗生物質が効きにくい菌が原因の場合はさらに治りにくくなります。

高齢者の尿路感染症を引き起こす病気って?

高齢者の尿路感染症の原因になる基礎疾患には、前立腺肥大症、切迫性尿失禁、神経因性膀胱などがあります。
それぞれの病気の特徴は以下の通りです。

男性に見られる「前立腺肥大症」

前立腺肥大症とは前立腺が大きくなる病気です。前立腺が大きくなって尿道を閉鎖してしまうと、尿が出にくい、残尿感があるなどの排尿障害が起こります。

40歳後半以降に多く、50歳代で約50%、60歳代で約60%、70歳代で約70%の男性に前立腺肥大症が見られるといわれています。
これは病気が進行するにつれて残尿量が増えて、それに伴って尿路感染症を併発しやすくなるためと考えられています。

女性に多い「尿失禁(切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁など)」

切迫性尿失禁とは急に強い尿意を覚えて、我慢できずに尿を漏らしてしまう疾患のことです。

また、腹圧性尿失禁というくしゃみや重い荷物を持ち上げたときに尿漏れする疾患もあります。この病気は中年以降の女性に多いとされており、その理由には女性が出産などを経験することが関係しています。なお、この腹圧性尿失禁も尿路感染症の原因になります。

男性・女性に見られる「神経因性膀胱」

神経因性膀胱とは神経経路の障害に伴う排尿障害のことをいいます。
本来であれば、膀胱に尿が溜まると脳が尿を出すように信号を送ります。しかし、この神経回路にトラブルが起こると、正しく蓄尿や排尿ができなくなり、尿路感染症を発症する可能性が高まるのです。

高齢者の尿路感染症、どうすれば予防できる?

高齢者の尿路感染症は治療が難しい傾向があるため、予防に努めることが大切です。そこで尿路感染症を予防するためのポイントについてご紹介します。

こまめに水分補給

高齢者に限らず、尿路感染症の予防にはこまめな水分補給が大切です。身体の中に水分が足りない状態になると、尿が濃くなって尿路感染症の原因となる尿管結石が形成されやすくなったり、尿量が少なくなることで尿道から侵入した細菌が体内に止まる時間が長くなって繁殖しやすくなるためです。

とくに、尿路感染症は再発を繰り返すことがありますので、発症したことがある人は日ごろからこまめな水分補給を心がけましょう。

また、高齢者では急激に多くの水分を摂りすぎると心臓や腎臓に負担がかかり、心不全などの重篤な病気を引き起こすことも少なくありません。水分は電解質が含まれた経口補水液を1~2口など少量づつ摂るようにしましょう。

我慢せずにトイレに行くこと

高齢者が尿路感染症を予防するためには、「我慢せずにトイレに行く」ことが大切です。そして、排尿後には陰部を清潔にしておくように意識しましょう。また、もし尿漏れパッドなどを使っている場合は、定期的に交換して清潔な状態を維持できるように努めてください。

抵抗力・免疫力を弱くしないこと

尿路感染症を予防するには、「抵抗力・免疫力を弱くしない」ことも重要です。そこで、たとえば、バランスの良い食事を摂取したり、体調に合わせた運動を行ったりすることもオススメです。そのほか、趣味などを通じてストレスを発散するのも良いでしょう。

違和感があれば早めに病院に行く

予防に努めていても排尿痛、頻尿、残尿感、尿漏れなどの違和感を覚えた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。これらの症状が見られても尿路感染症であるとは限りませんが、それでも早めに相談して、必要に応じた治療を受けることが大切だと言えます。

なお、前立腺肥大症や切迫性尿失禁などの基礎疾患がある場合は、尿路感染症を予防するため、また、生活の質(QOL)を維持するため、早めに泌尿器科へ相談しておきましょう。

おわりに:高齢者の尿路感染症は予防と早期治療が大切!

高齢者の尿路感染症は基礎疾患がある場合が多く、治りにくい傾向にあるため、発症しないよう「トイレを我慢しない」「抵抗力・免疫力を弱くしない」といった予防に努めることが肝心だといえます。
発症した場合は早期治療が重要になるので、もし違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診してください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

高齢者(102) 予防(235) 前立腺肥大症(13) 尿路感染症(23) 尿失禁(9) 治りにくい(1) 神経因性膀胱(2)