記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/1 記事改定日: 2019/4/16
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
がんなど強い痛みに対して使われる鎮痛薬、オピオイド。痛みの緩和のために使いたいけれど、依存症が心配という方も多いようです。
今回はオピオイドを使い始めるタイミングについて、オピオイドの作用や依存性とあわせてご紹介していきます。
オピオイド鎮痛薬とは、脊髄から脳に痛みを伝えるオピオイド受容体をブロックすることで、痛みを抑える薬のことです。
医療用麻薬と呼ばれる強い鎮痛薬の一種で、他の鎮痛薬が効かない場合や、がんによる強い痛みの緩和を目的に、患者の状態・性質にあわせて使用されています。
日本で使用されるものでは、モルヒネ・トラマドール・オキシコドン・フェンタニルなどが該当します。
いずれも高い鎮痛効果が期待できますが、副作用として吐き気・嘔吐・便秘・眠気・掻痒感・痛覚過敏などの症状が出ることがあります。
いわゆる不正な麻薬・覚せい剤とは明確に区別されており、具体的な違いとしては以下の点が挙げられます。
がんなどの痛みに対し、すぐにオピオイド鎮痛薬を使用することは基本的にありません。
オピオイド鎮痛薬の使用を開始するタイミングについては、WHOから以下のように段階的に使用することが推奨されています。
このように、疼痛治療は効果の弱い鎮痛薬から効果の強いオピオイド鎮痛薬へと、段階的に薬を変更していくのが一般的なのです。
専門知識を持った医療従事者によって、患者の痛みを緩和する目的でオピオイド鎮痛薬を投与した場合に、麻薬中毒に陥った例はほとんど報告されていません。このため、たとえ長期的に使用したとしても、医師の管理のもと適切に使用する限り、オピオイド鎮痛薬などの医療用麻薬に依存することはないといえるでしょう。
オピオイドは強力な鎮痛作用を持ちますが、副作用が非常に強いのが欠点でもあります。
特に問題となる副作用は吐き気・嘔吐や便秘などの消化器系症状です。
なかにはたくさん嘔吐したり、頑固な便秘のために体重が減少して衰弱するなど、日常生活に大きな支障を及ぼすことも少なくありません。このため、オピオイドを使用するときには、副作用の発現に注意しながら、吐き気止めや便秘薬などを適宜使用して副作用の改善を目指します。
その他にも、眠気が強く日中でも傾眠がちになることもありますので、投与時間を工夫するなどの対処が行われます。
がんなどで慢性的な疼痛があっても、すぐにオピオイド鎮痛薬が使われることはありません。通常は、非オピオイド系鎮痛薬からオピオイド鎮痛薬へと段階的に移行していく流れになります。また、患者の痛みの緩和を目的に医療従事者が扱うため、医療麻薬は適切に使用する限り違法な麻薬・覚せい剤のような中毒性・依存性はありません。慢性的な痛みがあり、オピオイド鎮痛薬の使用を希望する場合は、まず医師に相談しましょう。