記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
過剰な量の汗が止まらなくなってしまう多汗症。この多汗症に用いられる治療薬には、どんなものがあるのでしょうか?また、病院で処方される薬の代わりに、市販薬を使って治すことはできるのでしょうか?
多汗症(たかんしょう)とは、特に運動をしておらず、リラックスをしている状態でも汗を大量にかいてしまう症状です。この多汗症の症状は、日常生活や仕事に影響を与えたり、人間関係に支障をきたしたり、精神的な落ち込みにつながることもあります。
多汗症の中でも、病気や薬の影響がなく原因不明の多汗症は、部位や重症度に応じて治療が行われています。治療は、わきや顔、手のひら、足の裏など、部位や重症度によっていくつかの方法が選ばれます。薬の使用も治療のひとつであり、外用薬と内服薬があります。
どの部位の治療でも用いられているものが塩化アルミニウムの外用薬です。汗と反応して、汗が出てくる汗腺(かんせん)のはたらきを抑える薬になります。
内服薬は主に以下のようなものがあります。
汗をかくのは、脳から体温を下げるように指示が出て交感神経が活性化されている状態のときです。この交感神経の働きにはアセチルコリンという物質が関与しており、このアセチルコリンの働きを抑える薬を抗コリン薬といいます。
多汗症への治療で保険適用とされている抗コリン薬は、日本では「プロバンサイン®」のみであり、医療機関での処方となります。
不安や緊張が強くなると、汗の量も増加します。そのため、不安や緊張をやわらげる抗不安薬が処方されることもあります。
多汗症に関連している体質や要因を改善するための漢方薬が処方されます。ほてりを抑える、緊張を抑える、むくみをとるなど、いくつかの漢方薬が用いられますが、体質によって使用するものが異なります。漢方薬はドラッグストアで手に入るものもありますが、自分で体質を判断することは難しいものです。漢方薬には保険が効くものもあるため、医師の診断のもとで処方してもらうことが望ましいでしょう。
多汗症治療で使われる抗コリン薬のプロバンサイン®は医療機関で処方される薬ですが、いくつかの漢方薬などは市販薬として手に入るものがあります。しかし、多汗症の症状や自分の体質を自己判断することは難しく、自分に合った薬が選べるとは限りません。
また、市販の制汗スプレーで対処される方もいますが、市販の制汗スプレーに含まれる塩化アルミニウムは医療機関で処方されるものに比べて非常に低い濃度であり、多汗症に対しての効果はそこまで期待できません。ひとりで悩まず、医師の診察のもとで自分の症状に合う治療を受けていくことが望ましいです。
多汗症には、重症度に応じていくつかの治療方法があり、外用薬や内服薬の使用も含まれています。治療薬の中には、医療機関でしか処方されない薬もあります。安易に市販薬を用いるのではなく、医療機関で相談してみることが望ましいでしょう。