記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
脇の多汗症の治療でよく行われるのがボツリヌス毒素の注射ですが、気になるのがその費用です。このボツリヌス注射は保険適用内で受けることができるのでしょうか?また、どんな副作用が起こる可能性があるのでしょうか?以降で解説します。
多汗症(たかんしょう)は、汗を過剰にかいてしまう症状です。薬剤の影響や、内科的な病気にともなうものでなければ、命に関わる症状ではありません。しかし、汗が多いことで、日常生活や対人関係に影響が出てしまう人もいます。
脇の多汗症では重症度に応じていくつかの治療法がありますが、ボツリヌス毒素注射はそのひとつです。ボツリヌス毒素注射はボツリヌス毒素の局所注射を行う治療法で、「BT-A」「ボツリヌス療法」といわれることもあります。脇の多汗症に対しては日本でも海外でも推奨されている治療です。
汗の増加にかかわる神経は、自律神経のひとつである交感神経です。交感神経が刺激されて活発になると汗腺(かんせん)の働きが活性化されて汗が出ます。ボトックス注射は、この交換神経をブロックすることで発汗を抑える治療です。
ボツリヌス毒素注射による治療は、多汗症が重症であり厚生労働省が認めた製剤のみ保険診療となるため、条件によっては自費診療になることもあります。また、ボトックス注射の効果は約6ヶ月のため、継続的に治療が必要です。
どのような治療でも多かれ少なかれ副作用についての配慮が必要です。ボトックス注射を用いたボツリヌス療法では、まれに以下のような副作用が生じることがあります。
以上のような副作用は一時的なものとされますが、症状が強いときや、気になることがあるときは医師に相談をしましょう。
脇の多汗症治療の方法は、ボツリヌス毒素注射だけではありません。
一般的な脇の多汗症治療では、まずは外用薬の処方がすすめられます。症状に変化がなければボトックス注射を行います。そのほか、汗をおさえる薬や、緊張や不安をやわらげるための飲み薬を併用することもあります。
また、重症の場合には、手術によって交換神経を切ってしまう方法もあります(交感神経は脳からの指示を伝えて発汗をうながす神経です)。多汗症では、交感神経が何らかの要因で活発になっているため、交感神経の働きを抑えるために神経を遮断します。
手術は内視鏡を使って行う胸腔鏡下交感神経節遮断術(ETS)という方法です。ETSは、他の治療方法で改善がなく日常生活で著しく困難があるなどの、重症な人に検討されます。事前に医師の説明を受けて治療を強く希望する人への治療法です。
脇の多汗症によって、洋服のシミが気になる、他人からの視線が気になるなど心理的に負担になっている人もいます。ボツリヌス毒素注射は脇の多汗症において国内外で推奨される方法で、一定の条件に合えば保険内診療で受けることもできます。なお、ボトックス治療以外にもいくつかの治療方法があるため、医師と相談しながら自分に合った治療を選択していきましょう。