記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/11 記事改定日: 2019/6/10
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
牛乳を飲むとお腹を下してしまうことはありませんか? その原因は乳製品をうまく消化できない「乳糖不耐症」によるものかもしれません。
乳糖不耐症は赤ちゃんも大人も発症しますが、下痢が続くと栄養失調や脱水症状に至るケースがあり、赤ちゃんがいる家庭では特に気をつけたい病気です。以下の記事を予防や対処に役立ててください。
乳糖不耐症は消化器官の病気です。牛乳やミルクなどの乳製品には乳糖(ラクトース)という糖質が含まれています。この乳糖を分解する消化酵素(ラクターゼ)の働きが低下すると、小腸のなかで乳糖の消化・吸収がうまくできなくなり、下痢や腹部のけいれん、著しい体重の増減などの症状がみられます。
ラクターゼは歳をとると減少するため、赤ちゃんの頃から乳糖不耐症を発症していると、大人になってからも少量の乳糖で症状があらわれることがあります。
新生児から一歳前後の乳幼児にとって、母乳やミルクは大切な栄養源です。もしもお子さんが乳糖不耐症となったら適切な対応を行う必要があります。ところがお腹の不調は、牛乳アレルギーや食あたりなどほかの原因によることも考えられます。それでは赤ちゃんにどんな症状がみられたら乳糖不耐症の可能性が高いのでしょう。
赤ちゃんが乳糖不耐症になる原因は二種類に分けられます。
消化酵素を作る遺伝子に異常がみられます。ラクターゼを作れない、または作れたとしてもうまく働かないことがあります。赤ちゃんの乳糖不耐症の原因は、おおむね先天性によるものと考えられています。
風邪や胃腸炎などの感染症にかかると腸の粘膜が傷つき、ラクターゼの分泌が低下します。そのため乳糖の消化・吸収がうまくできなくなるのです。二次的乳糖不耐症の症状がみられるのは1~2週間程度から1か月以上までとさまざまですが、次第にラクターゼの働きは正常に戻ります。
赤ちゃんが先天性乳糖不耐症と診断された場合、基本的な対応は食事内容の見直しです。病院から薬が処方されることがありますが、根治を可能とする薬物療法は現在はありません。
乳糖を取り除いた食事に気をつけることで症状は避けることができますが、赤ちゃんの食事が母乳か粉ミルクかで対応は異なります。
母乳は消化にやさしく腸内環境を整える成分が入っているため、直ちに授乳を中止しなければいけないというわけではありません。
注意したいのは、お母さんが摂取した乳糖が母乳にも含まれるという点です。授乳中は牛乳や卵、大豆といった乳製品を控えめにしましょう。
授乳を中止し、乳糖不配合ミルクに切り替えます。
母乳とミルクの量を少しずつ減らしてみます。離乳食の内容は、牛などの動物に由来した乳製品(牛乳やヨーグルト)を制限しましょう。
冷たい食べ物・飲み物を避けて、消化器官への負担を和らげます。また、乳製品を制限したことでカルシウムが不足することがあります。離乳食を与えているなら、意識的にカルシウムを含む食品を食事に取り入れることもおすすめです。さらに、下痢が続いた赤ちゃんのおしりはかぶれやすくなりがちです。おむつ替えをやさしく丁寧にして、赤ちゃんが感じる不快感を和らげましょう。
赤ちゃんが乳糖不耐症のときには、母乳や通常の粉ミルクにも乳糖が含まれるため下痢などを引き起こすことがあります。このため、無乳糖のミルクを使用する必要があります。
乳糖不耐症に対する薬剤にはガラクターゼの活性を促すβ-ガラクトシターゼ製剤が使用されることがありますが、先天性の乳糖不耐症には効果が少ないため使用されることはあまりありません。
母乳やミルクは乳幼児の成長には欠かせない栄養です。赤ちゃんの便に異常を感じたら早めの受診をおすすめします。また、乳糖不耐症に伴う栄養バランスの崩れやおしりのかぶれも、気にかけてあげましょう。