記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/11
記事監修医師
前田 裕斗 先生
月経(生理)は、妊娠機能と深い関係があります。つまり、不妊治療をする上で、月経が正常であるかどうかということはとても重要なことです。そのため、不妊治療の検査は、月経周期の時期に合わせて各種の検査を行う必要があります。
そこで今回は、不妊治療において重要な検査の時期や、月経周期の短い原因、経血量など、不妊と月経の関係についてまとめました。
不妊治療の検査は、月経周期に合わせて行います。なぜなら、そもそも妊娠に関わる器官やホルモンは、月経周期に合わせて変化していくからです。具体的には、時期に合わせて以下のような検査を行います。
また、ヒューナーテストとは、排卵期に夫婦生活を行っていただき、精子が頸管粘液の中にしっかり侵入できているかどうか確認する検査です。ヒューナーテストに問題がなければ、タイミングや人工授精が行えるという一つの指標になります。
月経とは、受精卵の着床が起こらなかった子宮内膜が、役目を終えて剥がれて出てきたものです。月経の量が少なくなる原因としては、子宮内膜の量がもともと少なかったか、子宮内膜が十分にはがれていない場合が考えられます。
多くの場合、子宮内膜の量がもともと少ないことで起こります。卵胞の発育が不十分である、排卵に何らかの障害があった、黄体化非破裂卵胞(LUF)であった、など原因はさまざまですが、いずれの場合も排卵がうまくいかず黄体ホルモンが不十分となってしまいますので、不妊の原因にもなります。
不妊治療では、排卵を促したり、卵胞の発育を助けたりするホルモンを補充しますので、多くの場合、月経の量が少なくなることはありません。しかし、少なくなる、つまり子宮内膜の量が少なくなる治療もごく一部に存在します。
その代表的なものが、クロミフェン製剤を使用して排卵誘発をしている場合です。クロミフェンには、子宮内膜の厚みを薄くする副作用があります。クロミフェンの作用によって、子宮内膜が薄くなれば当然量も少なくなりますので、通常よりも月経量が減ることは当然考えられます。
黄体化非破裂卵胞(LUF)とは、基礎体温は上昇しているのに実際には排卵が起こらず、卵子が卵胞の外に出ない現象のことです。超音波検査で観察すると、排卵前とほぼ同じ大きさの卵胞がくっきりと映っているのがわかります。
黄体化非破裂卵胞が起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、卵胞壁の破裂に関わるプロスタグランジンというホルモンが関連しているのではないかと言われています。また、排卵が起こらなかったという自覚症状はありませんが、月経が早くなったり遅くなったり、また、量が少なくなったりして気づくことが多いです。
不妊治療で卵胞を育てているときに黄体化非破裂卵胞が見つかった場合、通常の卵胞と同様にただ消失していくだけならばその後に影響はないため特に治療の必要はありません。しかし、月経中にもホルモンを分泌したり、途中で排卵して新しい卵胞の発育に悪影響を及ぼす場合、ホルモン剤を服用して正常な排卵周期に戻す必要があります。
月経周期が短い場合、黄体期が短いことが考えられます。基礎体温でも高温期が12日未満と短い場合など、黄体機能不全の可能性があります。黄体機能不全の場合、排卵・受精には問題がありませんが、その後の着床・妊娠継続に大きく関わるプロゲステロンがうまく働きません。
そうなると、子宮内膜が発達せず、受精卵が着床できずに終わってしまう確率が高くなります。また、なんとか着床しても、すぐにプロゲステロンの分泌が切れてしまうことで、妊娠を継続することができなくなります。
治療法は、タイミングよく各ホルモンを補充することです。ホルモンの補充方法には、注射や内服の他、腟座薬や腟内クリーム、貼付剤などがあります。できるだけ負担が少ない方法を医師と相談して決めましょう。
月経周期が正常に繰り返され、排卵が行われているかどうかは、不妊治療において治療法を選択する上で最も重要な項目です。それを正確に把握することが、不妊治療の第一歩なのです。
もし、妊娠を希望されていて月経不順や無月経、明らかに月経周期が短くなる、などの異変が起こった場合は、ぜひ不妊治療の専門のクリニックに相談しましょう。
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