胃を全摘出したら、どんな症状が出てくるの?食事の注意点は?

2018/10/9

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

胃潰瘍や胃のポリープなど胃に関する病気は多くあります。胃の切除や全摘出が必要となるケースもありますが、食べ物の消化吸収を司る胃はとても大切な臓器です。胃を全摘出してからの生活ではどのようなことに注意をするといいのでしょうか。

胃を全摘出した後にどんな問題が出てくる?

胃の切除や全摘出によって胃の機能を失い、そのためにあらわれる不調を「胃切除後症候群」といいます。切除した部位や範囲によって症状の度合いは異なります。
胃切除後症候群は、手術後の早い時期にあらわれるものと何年も時間が経ってからあらわれるものがあります

全摘出後、比較的早い段階であらわれる症状は?

ダンピング症候群
食べ物は通常、胃の中に溜められてから小腸へ送られます。ところが胃を切除すると胃から腸へと食べ物が送り込まれるまでの時間が短くなり「ダンピング症候群」と呼ばれる症状がみられることがあります。症状が発生する時間帯によって「早期ダンピング症候群」と「後期ダンピング症候群」に分けられます。

早期ダンピング症候群

  • 食後30分以内にみられます
  • 全身症状(冷や汗、動悸、めまい、しびれ、だるさなど)
  • 腹部症状(腹痛、下痢、吐き気・嘔吐、膨満感など)
  • 数分~数十分ほど安静にして休息すると症状が改善されます

後期ダンピング症候群

  • 食後2~3時間後にみられます
  • 全身症状(めまい、通常とは異なる発汗、脈拍の増加、脱力感、失神など)
  • 症状の予防・改善には糖質の補給が必要
逆流性食道炎
手術後1~6か月を目安に、胃の全摘出をした患者さんに多くみられます。胃液や腸液が口まであがってきたり胸やけを感じるなどの全身症状のほか、胃のむかつきやみぞおちあたりの痛みといった腹部症状が発生します。上半身を少し高めにして安静にすると症状が改善されますが、投薬治療をする場合もあります。
下痢
術後1~2か月に発生しやすく、患者さんの約10%にみられます。小腸へ食べ物が急に流れ込むことにより、神経反射や腸の蠕動運動が過剰に刺激されることが原因です。
貧血
術後数か月ほどしてから発症することがあります。動悸や息切れ、めまい、頻繁な疲れを感じたら貧血を起こしている可能性が高いです。
そのほか
胃の切除によって栄養素の吸収が低下するため「栄養障害」を起こし、体力不振やむくみ(低たんぱく症)を起こすことがあります。たんぱく質や脂肪の吸収低下により乳製品の消化がうまくいかず「乳糖不耐症」を発症する可能性も少なくありません。

全摘出してから時間が経ってからあらわれる症状は?

胃切除後胆石
手術後3年以内にあらわれることが多く、胆石ができて腹部に強い痛みを感じます。摘出手術で胆のうの神経が切れてしまった場合に、胆のうの動きが悪くなると結石ができやすくなり、胃の切除をした患者さんの10~20%にみられます。治療法は胆のうの摘出ですが、胃の摘出手術時にあらかじめ胆のうを取って予防をすることもあります。
カルシウム吸収障害
カルシウムの吸収率が下がり、骨密度の低下がみられたり骨折や骨粗しょう症のリスクが上昇します。骨密度測定を定期的に行い食事療法や運動療法、投薬治療を検討します。

胃を全摘出した後、食事で気をつけることは?

胃を全摘出すると、食事は手術前と同じようにはできません。ですが工夫次第でおいしく楽しい食事をとることはできます。特に手術後一年目までは体の状態に合わせて食事の内容や調理法、頻度を調節することが大切です。

胃摘出後の体にやさしい食事のポイント

  • 消化のよい食品を選びます
  • 調理法は「ゆでる・煮る・蒸す」を中心に食材をよく加熱しましょう
  • 一日の食事は少量を少しずつ! 朝昼晩3食と間食2~3回の計5~6回を目安にします

胃摘出後の体にやさしい食品

  • 主食はおかゆ、やわらかめに炊いたご飯、うどんなど
  • 白身魚(調理法は煮る・蒸すから選ぶのがおすすめ)
  • 脂身の少ない鶏肉(ささみやむね肉を選び皮は取り除きましょう)
  • 大豆製品、絹ごし豆腐
  • 野菜類(葉野菜は葉の部分を加熱します)

気をつけたい食品例は?

  • 消化の悪いもの(もち、こんにゃく、イカ・タコ)
  • 油分が多く含まれるもの(揚げ物やベーコン)
  • 食物繊維を豊富に含むもの(ごぼう、海藻、ドライフルーツ)
  • お腹が膨れるもの(炭酸飲料、ビール)
  • 刺激の強いもの(辛い食べもの、スパイス、コーヒー)
  • 熱すぎる・冷たすぎる飲食物
  • 生野菜やお刺身(体が十分に回復してから徐々に食事に取り入れます)

おわりに:胃摘出後も食事は工夫次第でおいしくいただけます

食事は健康を支える大切なエネルギー源です。食品の選び方や調理法を工夫すれば、胃の摘出後もおいしい食事をとることはできます。術後の健康的な生活のためにも、ポイントを抑えて体にやさしい食事を楽しんでくださいね。

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