記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/4 記事改定日: 2019/11/8
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠検査薬で陽性反応が出た1週間後、月経がきた! そんなことがあるのでしょうか? これは「化学流産」と呼ばれています。ここでは、普通にみられる流産と化学流産について解説します。
胎児が正常に発達せず死産となることを自然流産(以下、流産)といいます。鈍い腰痛または腹痛、けいれんのような痛み、腟からの出血が兆候として現れ、糖尿病、感染症、甲状腺疾患などのホルモン障害をもつ母親では流産のリスクが高くなります。
妊娠早期の出血のその他の原因には、感染症、痔核、子宮頸がんなどもあります。
切迫流産もまた子宮から出血しますが、妊娠はまだ正常な状態です。血のかたまりが子宮内に形成され、流産のリスクが高まります。しかし、切迫流産と診断されても、ほとんどの妊婦さんが健康な赤ちゃんを出産しています。
化学流産は、妊娠反応は陽性と出たものの、超音波上で胎嚢が確認される前に流産してしまうことで、早期の妊娠喪失といわれます。
その徴候は月経が遅れることしかないので、多くの人は妊娠に気づきません。
最後に月経があってから約3週間後、子宮内に受精卵が着床し胎盤になる細胞は血液検査や尿検査で検出できるほど高いレベルのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ホルモンを分泌し始めます。しかし何らかの理由で着床が完了していないために、超音波検査で胎嚢や胎盤を検出できず、通常の月経がくる1~2週間後くらいに出血することがあります。
妊娠検査薬で陽性反応が出た後、腹痛のあるなしにかかわらず月経のような出血があった場合は、化学流産の可能性があります。すぐに医師に相談しましょう。
化学流産をしたときも基礎体温に変化が見られます。
妊娠していない状態の場合、基礎体温は排卵期頃に上昇して高温期へ移行しますが、着床が生じないと二週間ほどで基礎体温が下がって月経が生じます。
化学流産をしたときは、着床が完了していなくても高温期を維持するための女性ホルモン分泌が続きますので、出血が起きて女性ホルモンの状態が元に戻るまでは高温期が続きます。
受胎するとき、卵子と精子はそれぞれ23本の染色体を結合して受精卵となり、急速に細胞分裂して成長します。その過程で何らかの原因で染色体が多すぎたり、不足したりすることがあります。
これらの染色体異常はだれにでも起こりうるもので、初期の妊娠喪失のほとんどが染色体異常によって起こると考えられています。
将来的に妊娠したりすることができないということではありませんが、いくつかの危険因子(35歳以上の高齢妊娠、凝固障害や甲状腺疾患などの疾患)によって、化学流産のリスクは高くなる可能性があります。
妊娠検査薬で陽性反応が出たあとに軽度の出血があるとき、それが必ずしも化学流産を意味するとは限りません。
すべての女性が経験するわけではありませんが、一部の女性が経験する着床出血は、妊娠の徴候です。一方、重い出血、月経痛のような痛み、腟からの分泌物は化学流産の徴候です。
いずれにしても、妊娠検査薬で陽性反応が出てから時間が経っていないのに出血したときは、医師に相談しましょう。
医学的にみると、化学流産は流産には該当しません。「流産」という名がついているので動揺しても不思議ではありませんが、化学流産はあなたのせいではないということを知っておきましょう。
ほとんどの流産の原因は染色体異常なので、それを事前に防ぐことはできません。 また、早期流産したからといって、次も流産するというわけではないことも覚えておきましょう。むしろ、見方によれば化学流産は妊娠したことを示しますから、妊娠できる可能性を示しているともいえます。
非常に早期の妊娠喪失は医学的治療を必要としませんが、化学流産したと思うときは念のため病院を受診しましょう。
1、2回の流産を経験しても心配することはありません。しかし、3回連続して流産したときは、不妊治療をする前に医学的問題が原因ではないかを確認するために検査をすることをおすすめします。
健康状態や何らかの病気が流産の原因であることがはっきりすれば、原因に合わせた治療が検討されるでしょう。
化学流産は聞きなれないことばかもしれませんが、一般的には「胎嚢が確認される前の流産」として定義されています。また、何回流産したときに詳しく原因を検査するかについて、2回以上か3回以上かはいまだ議論が分かれていますが、最近では「2回流産を繰り返したとき」は検査を開始することが主流になりつつあります。
いずれにしても、予期せぬ出血はお医者さんに相談したほうが安心です。