移植するために腎臓を摘出したとき、体に影響が及ぶリスクはないの?

2018/11/27

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

家族の腎臓移植のために自分の腎臓を摘出した場合、気になるのがその後の健康リスクですよね。以降では腎臓摘出の術後に起こり得るリスクについて、詳しく紹介していきます。

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移植のために腎臓を摘出した場合の、術後の影響は?

生体腎移植は、末期腎不全の人(レシピエント)を健康な人(ドナー)の腎臓を移植する治療法で、腎臓摘出手術と腎臓移植手術がほぼ同時進行で行われます。

日本ではドナーになれるのはレシピエントの親族に限られています。腎臓の摘出手術自体は、今日では移植目的以外でも広く行われている安全な手術といわれ、特に腎臓提供手術ではその安全性を保証するために最大限の努力が払われています。

しかし危険性が全くないというわけではなく、わずかですが、米国のデータでは提供手術に伴う死亡率は0.03%、日本でも2013年に死亡事故が報告されています。術後の長期の生存率には全く差はないとされており、提供後に定期的に医師にかかることもあって、むしろ長期の生存率が優れているともいわれています。

リスクとしては、創部(そうぶ)感染、出血、気胸、腹壁瘢痕ヘルニアなどの合併症を伴う可能性が数%あるとされていますが、今日ではさらに減少しているといわれています。術後の経過に問題がなければ、手術の翌日から立って歩いたり食事もでき、3日程度で退院できるようになります。退院後は日常生活に特に支障はありませんが、残された腎臓の機能を悪くさせない注意は必要です。

腎臓摘出からしばらく経ってから体に影響が及ぶことはないの?

ドナーは、腎臓が1つになることから提供後の腎機能は提供前のおよそ7割程度となりますが、もともと正常な腎機能を持ち健康であるなら、一時的に腎機能が低下してもその後はあまり変化せずに安定します。腎不全に至るリスクは非常に低く、腎臓提供後に透析療法が必要となることはほとんどありません。

ただし、提供後に残った片腎にかかる負担が大きくなると高血圧や尿蛋白が出る場合があり、これらはわずかに悪化しただけでも心臓病や慢性腎臓病へと進行する可能性があるため注意が必要です。

最近の研究では、一般と比較すれば低いものの、もともとドナーと同じくらい健康であった人と提供後15年以上の長期で比較すると、心血管病による死亡リスク、末期腎不全になるリスクがわずかに高くなることがわかっています。

40歳以下の若いドナーの場合、長期的にみたリスクにも留意が必要です。手術前には腎提供によるリスクについて十分な説明を受け、提供後は10年以上にわたって少なくとも年1回は定期的な腎臓機能評価、経過観察が必要です。体重や血圧を測定すること、習慣的に運動すること、血圧の上昇や体重の増加がある場合には減塩やカロリーを減らした食事をこころがけるなど日常的に体調管理を行い、腎機能を低下させる生活習慣病を予防することが大切です。

おわりに:腎臓摘出後のリスクはそこまで高くないが、腎臓への負担を考慮した生活を

腎臓の摘出手術にはその安全性を保証するために最大限の努力が払われており、もともと健康な人がドナーとなることもあって日常生活に影響はほとんどないといわれています。ただし、腎臓が1つになることから腎機能はもとの健康状態よりは若干下がらざるをえません。日常的な体調管理と長期にわたる通院による経過観察を続けることが必要です。

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